検察側控訴断念へ 新証人確保困難 大野病院事件

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤の剥離(はくり)を続けた判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)を無罪とした福島地裁判決について、検察当局が控訴断念の方向で最終検討に入ったことが28日、分かった。

 20日の判決で鈴木信行裁判長は「胎盤剥離を中断して子宮摘出に移っていれば大量出血を回避できた」とする検察側主張を認めたが、剥離を続けた判断については「標準的な医療措置であり、直ちに剥離を中止する注意義務はなかった」と過失を否定。「検察側は主張の根拠となる臨床症例を示していない」と証拠不足も指摘し、医師法違反を含め無罪とした。

 公判で福島地検が周産期医療の専門家を証人として立てられなかったことなどが証拠不足につながったことから、検察当局は臨床経験の豊富な証人を新たに確保できるかどうかなど、証拠補充の可能性を慎重に探っているが、困難との見方が強まっている。

 女性患者は04年12月、帝王切開手術を受け、癒着胎盤の剥離の過程で大量出血し死亡した。福島県警は06年2月、加藤被告が大量出血を予見できる状況になっても剥離を継続したとして逮捕、福島地検が翌月に起訴した。

 同事件では、日常起こり得る医療事故で医師が逮捕、起訴されたことに医療界が強く反発。日本産科婦人科学会は判決後、「裁判による医療現場の混乱を1日も早く収束するよう、控訴しないことを強く要請する」との声明を発表している。
2008年08月29日金曜日

福島

社会



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