専門家に投げっ放しではダメ
これは、ITに詳しい、詳しくないというレベルの話ではない。「自分たちのやりたいこと、達成したいこと」を明確化する段階も業務の一部だ、という認識の問題だ。例えば、コンサルタントやベンダーから提案を受ける前後の段階で、彼らとの細かなやりとりが発生しているはずだが、既にそれはゴールのイメージを固める作業の一部であり、その時点からプロジェクトは実質的にスタートしているのだ。ならば、場合によっては提案にもフィーを支払う、という感覚があっていい。
裏返せばこれは、「誰かに頑張ってもらえば何とかなるだろう」という甘えとの決別でもある。実際これまで日本人は、様々な業務を気合と根性で乗り切ろうとし、またそれを取引先にも押しつけてきた面がある。工場では、業者も含めて寝ずに働けば製品が完成するように。あるいは足で稼げと無理な営業活動を強いたように。
高度成長期は、わざわざゴールを設けずとも、このやり方で成果をあげることができたのも事実かもしれない。この強烈な成功体験は、まだまだ企業に染み付いているように思う。時間単価と工程数で効率を計ろうとする思想が残っているのも、その証左のように思える。しかしそうした考え方こそが、実は日本におけるITの土壌を奪っているのではないか。
だとすると、やはりITを使いこなす側であるユーザーがしっかりしなければ、何も変わらない。それこそユーザーの主体的な意識が低ければ、たとえベンダーたちに悪意がなくても、彼らに我田引水され、その言いなりになってしまう。それでは不効率なだけでなく、本来作るべきものが作れなくなる危険性が高まる。このところあちこちで頻発する事故や品質低下も、実はそんなところに一因があるのではないだろうか。