4年前にイラクで人質事件があったとき、どれほど非道い報道がなされたか。
そのせいで、高遠さんらの善意が、見も知らぬ「自己責任論」を唱える者たちのドロ靴で踏みにじられたのは、まだ記憶に新しい。
今回の伊藤さんに関する報道では、そこまで非道いものはないのは、まだしもであるが、一つ注意はしておきたい。
なぜ、高遠さんたちは、故無きバッシングに晒されたのか。
答えはただ一つ、「自衛隊の撤退」が問題になったからだ。
今回は、直接には、アフガン・インド洋からの自衛隊撤退は問題にならなかった。
もし、ペシャワール会や遺族の方が、伊勢崎さんの指摘した見解を大々的に述べたりしたら、マスコミは一斉に死者を鞭打つことをだろう。
そして、今向かいつつある方向は、
官房長官会見
2008.8.28 産経
「こうした非道な行為に対して強い憤りを感じるとともに、伊藤さんの遺志に応えて平和協力国家日本として今後いろんな努力をしていかなければいけない」と述べた。
1年延長法案提出へ インド洋給油 政府『テロとの戦い』重視
2008.8.28 東京新聞
福田首相は、世界各国がアフガニスタン周辺での「テロとの戦い」を重視している国際情勢を考慮。二〇〇一年以来八年間の実績がある給油活動の継続が、日本にとって最も効果的で安全な国際貢献と判断した。
という具合に、「アフガニスタンは危ないから給油活動だ」と強弁し、伊藤さんの死を利用して、国会で窮地に追い込まれている新テロ法案の延長をゴリ押ししようとしている。
両陛下が伊藤さん両親に弔意 侍従長通じ
2008.8.28 47news
こうなってくると、もう伊藤さんを「英霊」扱いしてしまおうという意図まで感じられる。
こうした動きに対し、さすがに
ペシャワール会「方向が違う」=町村官房長官の給油継続発言
2008.8.28 時事通信
町村信孝官房長官がアフガニスタンで伊藤和也さんが拉致され死亡した事件に関連し、インド洋での自衛隊の給油活動を継続する方針を示したことについて、伊藤さんが所属する「ペシャワール会」(福岡市)の福元満治事務局長は28日、「方向が違うんじゃないか。だから武力がやっぱり必要だというのは浅過ぎる」と批判した。
という発言もあった。
今後、ペシャワール会とご両親に対し、どのような扱いがされていくか。
バッシングはもちろん許し難いけれども、今回はある種の「ほめ殺し」の可能性が高い。
それで、遺族の口を封じて、伊藤さんの死を、戦争継続の口実に使おうという邪悪な意図が滲み出している。
心して見守りたい。