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安易な受診、病院に負担 三次市が来月から医療助成拡大 '08/8/28

 小学六年までの子どもの医療費を助成している三次市は九月から、広島県内で初めて中学三年までに拡大する。子育て環境充実に向けた施策で、市民は医療機関を受診しやすくなる。一方、市立三次中央病院の小児救急患者のうち軽症は95%を超え、現場の負担は大きい。制度拡大に当たり、地域医療を守るためにも、正しい病気の知識を身に付け、適切な受診のあり方を考えるきっかけにしたい。

 ▽小児急患の95%が軽症 病気の知識を学ぶ契機に

 市は九月から、通院月四日、入院は月十四日まで一日五百円、以降は無料となる制度を中学三年まで拡大。対象者は千六百八十人増え、本年度の受診者は千四百人増を見込む。

 軽症なのに軽い気持ちで休日夜間の救急窓口を利用する「コンビニ受診」が全国的に問題となる中、三次中央病院の小児救急のうち軽症は95〜97%台(二〇〇三〜〇六年度)と高い。一方、入院患者は2〜3%台(同)にとどまる。加えて、小児救急拠点病院に指定された〇四年七月から二十四時間、年中無休の小児医療を始め、救急患者は以前の約一・六〜一・四倍に増えている。

 「昼間は仕事があるので夜来た」「熱があり念のため」などのケースもあるといい、本当に治療が必要な患者への対応に支障が出る恐れもある。現在、小児科医四人が、地元開業医らの協力を得ながら交代で勤務するが、小児科医が一人でも欠けると小児救急維持は困難という。

 緊急性を判断

 三次中央病院では、休日夜間に小児救急の専門看護師が電話相談を受け付け、親の不安の軽減や緊急性の判断にあたっている。病院や自治体の広報誌でも適切な受診を呼び掛け、現場の負担軽減を図る。市も育児教室で病状を学ぶ機会を設けている。

 市子育て支援局の横光春市局長は「核家族化し、相談相手がいないのが一つの要因で親の不安も理解できる。ただ、明らかに軽症で受診すれば現場に負担がかかるので、まずは電話相談するなど、適切に利用してほしい」と呼び掛ける。

 兵庫県立柏原病院では、コンビニ受診が一つの要因となり、医師が辞めるなど、小児科の維持が困難な事態に直面した。子育て中の母親が「県立柏原病院の小児科を守る会」を設立。症状や受診の必要性を見極める冊子の作製や勉強会を開くなどして、医師の負担軽減に取り組んでいる。

 財政負担も増

 医療費負担が少ないとの理由で、安易な受診が増えれば、市財政の負担が増えるだけでなく、地域医療の崩壊も招きかねず、最後は住民に影響が返ってくる。子が病気になった親の不安を和らげる対策など、市や住民が一体となって探る必要があるのではないだろうか。(余村泰樹)




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