週刊・上杉隆

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【第42回】 2008年08月28日

臨時国会の会期を縮めた本当の理由を報じないメディアの遠慮

 日本中が北京オリンピックで浮かれている頃、永田町では、臨時国会の召集日とその会期を巡って、福田官邸と公明党が激しいつば競り合いを演じていた。たぶんに国会内だけの争いであるようにみえるがそうではない。新テロ特措法や補正予算審議など秋以降の政治日程を決める重要な話し合いであった。それは「世に知られるだけの価値は十分に持っている」といえよう。

 結論をいえば臨時国会は、9月12日召集、70日間の会期となった。自然承認のある予算案はいいが、これによって新テロ特措法の会期内成立は厳しくなった。会期延長後の三分の二議決以外に成立の道はなくなった。

 だが、こうした水面下の攻防に至ったそもそもの理由が詳細に報じられることはなかった。駆け引き自体は、五輪報道の陰で、遠慮がちに政治面に掲載されてはいた。

関係者が語る
公明党の真の狙い

 しかし、なぜ公明党が連立与党の自民党に対して、召集を遅らせ、会期を短縮させるように求めたのかを知るにはあまりに報道量が少なすぎた。

 その背景は政治面ですら、敏感な読者や視聴者が想像を逞しくしてやっと理解できる程度にしか記されていないほどだ。けさ(8月28日)の朝日新聞朝刊ですら、いまだこのような感じである。

〈ところが、公明党は7月の北海道洞爺湖サミット後、急速に首相と距離を置き始めた。政権浮揚が期待されたサミットや内閣改造後も支持率があがらず、公明党が求める早期解散に踏み切る気配もない首相に対し、「このままでは総選挙を戦えない」との意見が急速に高まっている〉(朝日新聞/2008年8月28日)

 これまでの報道を総合すれば、公明党の狙いは次の3点ということになる。

・総選挙の日程を、来年7月の都議選から可能な限り遠ざけたい。
・支持母体である創価学会、とくに婦人部・女子部からの反対意見の強い新テロ特措法を成立させたくない。
・福田内閣を退陣させて、新しい自民党の顔で総選挙を戦いたい

 この夏、本当にこれだけの理由で、公明党は頑な抵抗を続けてきたのだろうか。

 「どれもそれなりの理由にみえるだろう(笑)。でも、決定的なのはアレだよ」

 こう語るのは創価学会関係者(匿名)だ。同じ人物がアレの意味を説明する。

関連キーワード:政治

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執筆者プロフィル

写真:上杉隆

上杉隆
(ジャーナリスト)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。

この連載について

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。

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