そして悲しき、オ○ンコ外交ビジネス。。。
(私の別ブログから転載)
わが心、南溟に消ゆ (西木正明著、集英社文庫)
元インドネシア大統領スカルノの第3夫人と言われて思い浮かべるのは、あの厚化粧の気色悪いオバハン、そう、デヴィ夫人(本名:根本七保子)のことであろう。だが、彼女が第3夫人になる以前に、幻の第3夫人、それも日本女性がいたことは、知られているようで知られていない。
本書は、その幻の第3夫人であったバスキ夫人こと「周防咲子」(本名:金勢さき子)の悲しい物語である。
歴史を振り返ってみると、1958年に日本とインドネシアは、植民地支配に対する賠償協定を締結した。賠償金は2億2300万ドル、当時の日本円で約830億円という内容だった。この金額は当初のインドネシア側の要求額の10分の1にも満たない額であったが、経済危機脱出、財政再建を急いでいた同国は、一刻も早く外貨資金を必要としており、妥協したのであった。スカルノは貿易振興によって国家経済を立て直そうと考えており、そのための輸送船舶を日本から購入することにした。そして、この取引・利権をめぐって、日本の商社、政商、政治家が暗躍することになる。賠償金ビジネスの闇、といったところか。
いち早くスカルノ大統領に食い込んだのが、中堅商社である木下産商であった。同社のバックには、岸信介首相がついていた。木下産商は、お忍びで来日するスカルノを接待する手段として、クラブホステスだった咲子に白羽の矢を立て、彼女をスカルノに差し出し、SEXの相手を務めさせた。漁女家のスカルノはすっかり咲子を気に入り、第3夫人としてインドネシアに招きたいと、プロポーズするにいたった。1958年10月、咲子はインドネシアへ渡った。
インドネシアでは、召使付きの豪邸をあてがわれ、とりあえず何不自由ない生活を与えられた。特にこれといってすることはない。唯一の務めは、大統領がいつ訪問してきてもいいように、身支度を調え、SEXの準備をしておくことだった。
しかし、平穏な生活は長くは続かなかった。
スカルノの足が、急速に咲子のところから遠ざかり始めたのである。
洩れ伝わってくる話によれば、どうやら大統領には、別のお気に入り女性ができたらしい、それも日本人の。ということであった。
賠償金ビジネスへの食い込みを図る東日貿易という商社が、自民党副総裁の大野伴睦、河野一郎、政商の児玉誉士夫をバックにして、スカルノに新たな美女をあてがい、木下商産とスカルノの関係に割って入ってきたのだった。その美女というのが、根本七保子であった。
ショックを受けた咲子の心は乱れた。
1959年10月、彼女は、遺書を残し、バスルームで手首を切り、自殺を遂げた。
日本の家族には、病死として報告された。スカルノの配慮により、未取得であったインドネシア国籍を彼女に与え、その遺体は丁重に葬られた。が、しかし、今はその墓もなく、彼女がバスキ夫人であったことを示すものは何もない。
小説の最後は、次のような結びの文章で終わっている。 インドネシア大統領第3夫人バスキこと周防咲子の遺体は、ジャカルタ西北郊外の墓地にひっそりと葬られた。1980年初頭、この墓地は市街地開発事業のため整備されて跡形もなくなり、現在は広い幹線道路になっている。当時、咲子は、スカルノ大統領と事実婚という関係にはあったものの、インドネシア国籍も有せず、正式な夫人としては認知されていなかった。そのため、後から来たデヴィ夫人が、第3夫人となり、咲子は幻の第3夫人、ということになってしまったようである。そのデヴィ夫人でさえ、インドネシアに渡ったのは1959年であったが、国家的に「第3夫人」として認知されたのは、1965年になってからである。
デヴィ夫人とスカルノ大統領の出会いについて、公式プロフィール的には、「59年、訪日中のインドネシアのスカルノ大統領と、ティーパーティで運命の出会い。3回目のデートでプロポーズされ、インドネシアに渡り・・・」などと表現されているようであるが、実情は、「運命の出会い」などというキレイなものではなかった。先にも記したように、賠償金ビジネスの利権に食い込もうとした東日貿易が、ホステスだった彼女を「人身御供」としてスカルノに差し出した、そして、札束に目の眩んだ彼女が股を開いた。
つまり、有力政治家をバックにつけて、日本の商社が、スカルノ大統領に日本人女性のオ○ンコを提供し、外交ビジネスを展開した、ということに尽きる。
インドネシア渡航の経緯について、デヴィ夫人には人に知られたくないことがいろいろあるようで、その辺のことを暴露したモデル小説があったらしいのだが(『生贄』 梶山季之)、デヴィが名誉毀損で訴えて、絶版となってしまっている。読んでみようと思い、ネットの古本屋で探しているが、なかなか見つからない。。。
【参考文献】
・同書「解説」 ・『噂の眞相』(1999年12月号) |