県内で昨年度、自殺を図った未遂者に対して医療機関での治療後、常勤精神医がいる機関では36%が精神科に転入院になっているのに比べ、不在の機関では3%にとどまっていることが、県精神保健福祉センターが県内の救急医療機関を対象にした調査で分かった。【山口圭一】
先行研究では、自殺者の約4割に未遂歴があり、未遂後1週間~1カ月後に再発する可能性が高いとされる。県内でも、未遂者の38%が以前にも自殺を図っており、自殺を繰り返す傾向が強いが、見過ごす恐れも高い現状が浮き彫りになった。
調査は、昨年度自殺を図った未遂者を対象に、県内救急医療機関57カ所へ調査用紙を郵送して実施。48カ所から回答を得た。回収率は84・2%。同センターによると、自殺未遂者に関する都道府県規模での調査は、東京都など全国でも数少なく、県内では初めて。
調査結果によると、昨年度の自殺未遂者は計558人。女性が7割で、年代別では20代が35%と最も多かった。自殺の手段は、医薬品の過量服用の48%が最多だった。
未遂者の34%は治療後に帰宅、31%は内科や外科などに転入院しており、必ずしも精神科で対応できていない。過去の精神科や心療内科の受診歴についても、常勤精神科医がいる医療機関では70%で受診歴が見られたものの、常勤精神科医がいない機関では56%が不明だった。過去に自殺を図ったかどうかについても、常勤医がいない機関では、79%が不明と回答。医療機関によって未遂者への対応が大きく異なる現状が明らかになった。
また、全48機関のうち25機関の医師は「特に何もしていない」と回答。未遂者への対応が難しい理由(複数回答)として、「精神科に行きたがらない」(22機関)、「病院に精神保健専門家がいない」(24機関)などを挙げた。
自由記載欄では、「専門医(病棟)のない状況で経過をみていかなければならないことに困難を感じる」(医師)などの声も寄せられており、同センターの黒澤美枝所長は「未遂者への普及啓発のほか、家庭医など地域で働きかける体制づくりも必要だ」と話している。
毎日新聞 2008年8月28日 地方版