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【社会】

CT、MRIで死因解明 医療事故調に導入方針

2008年8月28日 朝刊

 厚生労働省は、医療事故死が疑われる患者を対象に、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)を遺体の画像分析に転用して死因を解明する方法を、今秋から首都圏の大学病院などで試験的に実施することを決めた。

 「死亡時画像病理診断」(Ai)と呼ばれ、同省研究班が2010年3月までに結果を集約。有用性を確認した上で、国が創設を目指す医療版の事故調「医療安全調査委員会」の調査に導入する方針。

 死因究明の最有力手段は解剖だが、病理医や法医の不足、遺体を傷つけたくないという遺族の抵抗感などで、国内での実施率はわずか2%台。

 厚労省は「画像診断で医療ミスの疑いがあるかどうか見当が付けば、遺族から解剖の同意も得やすくなり、効率的な調査が可能になる」(医療安全推進室)と期待している。

 研究班の計画では、試験実施は東大病院(東京都)、千葉大病院(千葉市)など7カ所で行う。

 このうち東大病院では車両搭載型の移動式CTを11月から1、2カ月間レンタル。都内の他の病院で亡くなった患者の遺体を対象に、画像診断で死因を推定した後、病理解剖を行う。

 その上で(1)画像診断と解剖結果は一致しているか(2)死因について遺族の理解は深まったか−などを放射線科医、臨床医らが事例ごとに検証する。

 千葉大病院や筑波メディカルセンター病院(茨城県つくば市)では既に、病気で死亡した患者らを対象にAiを本格導入しており、CTやMRIを専門的に扱う放射線科医からの症例報告を求め、遺体を解析する際の手順や留意点を確認する。

 【Ai】 死亡時画像病理診断(Autopsy imaging)の略。患者の死亡後、遺体をCTやMRIで撮影し、死因を探る方法。短時間に多くの症例を調べることができるほか、解剖が必要な体の部位をあらかじめ絞り込むことができるため、正確、迅速な死因解明につながると期待されている。2004年にAi学会が発足。日本医師会も今年3月、Ai活用に関する検討委員会の中間報告をまとめるなど、医療現場での実用化に向けた取り組みが広がっている。

 

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