三段の棚に設けられた六つの小さな空間。体を折り曲げて人一人がどうにか入れる狭さの中で、ダンサーたちが巧みに体を動かし熱演する。
先に神戸市で開かれた「全日本高校・大学ダンスフェスティバル」で岡山大モダンダンス部が、見事最高の文部科学大臣賞を射止めた。様子を紹介するテレビ映像を見て、思わず引き込まれてしまった。
テーマは「井の蛙(かわず)」。狭い世界から出ようともがく様子をテンポの良い動きで表現していく。苦悩する姿は若者自身の心理か、あるいは閉塞(へいそく)感漂う大人社会の象徴かと想像が広がる。
部員数は、わずか六人という。多人数のスケールの大きさで主張をアピールする出場校が多い中で、不利を逆手にとった。小さな空間に凝縮された迫力ある演技と、鮮やかな発想の転換が見る人の心をとらえ審査員から絶賛された。
創作ダンスといえば、難解でとっつきにくいものと思っていた。しかし、各校とも詩や社会問題、人生などを題材にして、自分たちでストーリーや表現方法を考えている。若者たちの視点が興味深い。
地元の学生たちの快挙が創作ダンスを身近に感じさせ、楽しみを引き出してくれた。他にも知らないうちに遠い存在と思い込んでいるものは多かろう。先入観という井戸から一つでも多く魅力を見つけたい。