海外

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

アフガン邦人拉致:「今は待つしか」 父、眠れず一夜

 アフガニスタンで活動中の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(福岡市)のスタッフ、伊藤和也さん(31)が拉致された事件で、発生から一夜明けた27日朝、父正之さん(60)=静岡県掛川市=は「昨夜は横になっても眠っていないような状態。妻は体調が良くない」と心労を語った。電話で代表取材に応じた。【舟津進】

 外務省が伊藤さん解放の現地情報を明らかにした後の26日午後9時半、同省から「誤報だった」との連絡が入ったという。またペシャワール会からは同11時ごろ、「情報がいろいろあり不確定で(真相が)つかめない」と電話があった。

 妻順子さん(55)は解放情報が誤りだったことにショックを受け、正之さんは「正しい情報や本人が無事と確定できる話がほしい。今は待つしかない」と話した。家族は今のところ現地へ行く予定はないという。

 福岡市中央区大名のペシャワール会事務局では、男性会員5人が徹夜で現地からの連絡を待った。しかし、安否情報が入り乱れるなど事態が好転する兆しは何一つなく、疲労や焦りの色も出始めた。

 同会の福元満治事務局長(60)が27日午前10時、会見した。「昨夜から今朝にかけて新しい展開はありません。外務省にも情報は入っていないようです」と厳しい表情で述べ、確証はないと断ったうえで、「現場では夜が明けると村人700~800人が(犯人の逃げ込んだ)山を包囲して捜索してくれると聞いている」と期待を込めた。

 また、一部で報道された、現地の地元有力者を介し伊藤和也さん(31)の身柄が引き渡されるという情報も「まったく確証はありません」と答え、入り乱れる情報に翻弄(ほんろう)されている様子だった。

 犯行が反政府勢力「タリバン」によるものとの説は「あの地域のタリバンは我々が現地で長い間活動していることを知っているはずなので、そういうことはしないだろうと思います」と否定。「とにかく伊藤君が無事であること(を祈る)だけです。ご家族の気持ちを思うといたたまれない」と言葉をつなげた。

 ◇「現地の信頼厚いはず」--援助団体ショック

 アフガニスタンでの事件発生に、国際援助団体からは今後の活動への懸念の声が上がった。

 約15年間、教育支援活動を続けてきた「宝塚・アフガニスタン友好協会」(兵庫県宝塚市)代表の西垣敬子さん(72)は、自らもペシャワール会の会員だったことがある。「現地の人から厚い信頼を寄せられている団体で、大変ショックだ」と驚きを隠せない。

 西垣さんは今年3~4月、資金援助で建設した女子大生向け寮の整備のためにジャララバードを訪れた。道路の検問が異様に厳しく、「テロリストの移動に対する警戒が強まっていると感じた」という。タリバン勢力の巻き返しでテロも増えており、「現地での支援の輪が消えてしまうのが心配だ」と述べた。

 03年からアフガンの農業再建支援に取り組んできた神戸市のNGO「海外災害援助市民センター(CODE)」の村井雅清・事務局長(57)も、「古くから支援に尽力してきたペシャワール会のメンバーですら狙われる。それほど治安が悪化している」と懸念を示した。

 岡山市の国際医療支援団体「AMDA」グループの菅波茂代表も「ペシャワール会は、徹底的に地元密着型で活動しているという。現地で恨まれることは考えにくい」と話した。【山田奈緒、川口裕之、石戸諭】

毎日新聞 2008年8月27日 東京夕刊

検索:

海外 最新記事

海外 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報