製造業各社が仕入れ価格アップを商品価格に転嫁するのは当然のことであり、それはむしろ企業努力だと言う風潮になっているようだ。だが自ら仕入れ先と折衝した結果なら、まずは当該企業自身で負担するのが筋だろう。そうなった背景には自らの戦略上のミスや、世の中の変化に対する読みの甘さがあったのではないか。そんな議論も無く強気の需給関係を背景に価格転嫁がなされていく。なお一層の高収益を求め、ユーザー業界の業況などお構い無しに。
大手企業による価格転嫁の付けは結局は立場の弱い中小企業に回される。難しい状況にあるゼネコンは、資材高を下請けの中小建設会社にしわ寄せする。自動車や家電メーカーの資材調達価格のアップは、即部品加工業者へのコスト削減ノルマとなる。資材の流通に携わる中小企業は収益よりも決済資金で行き詰まるだろう。銀行の融資先選別がこれら中小企業に追い打ちをかける。
我が国製造業は顧客との密接な関係の中で力を培ってきた。同時にその関係を陰に陽に支えたのが中小企業である。彼らの存在が大手企業の生産性を高め、品質、納期などの面でメーカーとユーザーとの間の隙間(すき・ま)を埋め、更には不況時の緩衝材ともなってきた。製造業全体の発展にとって欠くことのできない存在だった。それらを土台にして今でもわが国製造業はある。
その来し方も省みず己の足元の利益最大化を至上命題に据え、顧客をないがしろにし弱者は消えて結構といわんばかりの経営は、砂上に楼閣を建てるに等しい。
ユーザー業界が衰退しても素材メーカーは発展し、中小企業無しに我が国製造業が繁栄する、そんなことは在り得ない。(啄木鳥)