「直接真意を確認した上で批判する」という行為はどの程度実践されているのか
ある人や組織の発言について、これを批判する前に、その発言者等に直接アクセスしてその真意を確認すべきだとお考えの方はまず自ら実践されたらよいのではないかと思います。
それはともかく、そのようなことを実践しないのは怪しからんという話は、お医者様の発言を批判した今回のケースについて初めていわれたことなので、ひょっとしたら、お医者様は従前よりそのようなことを実践されていたのかもしれません。ということで、お医者様による第三者への批判がどのように行われているのかということを、全国医師連盟の「医療安全調査委員会新設への意見」に対して寄せられた、医療安全調査委員会の新設に関する与党案についてのコメントを見て検討していきたいと思います。
まず、沖縄に住む30〜39歳の医師の方の発言ですが、 官僚の天下り先を作りたいのでしょう。
とのことですが、医療安全調査委員会を設立しようという案を提示した目的が「官僚の天下り先を作りたい」からであるとの点について、与党関係者にコンタクトをとって確認したのでしょうか。
次に、九州にお住まいの40〜49歳の医師の方の発言ですが、どこまで、医師を貶めればすむのでしょうか?
とありますが、与党案の作成者に、医師を貶める意図で与党案を作成したのか確認されたのでしょうか。医療関連死について、闇から闇に葬るのではなくて、調査委員会を設置して、そこで原因を調査し、処罰すべきものは処罰しましょうと提案することは、「医師を貶める」ことになるのでしょうか。ひょっとして交通事故で通行人をひき殺してしまった場合に警察等への通報義務を負わせるとともに、実況見分等の調査活動を警察に行わせ、処罰すべきものを処罰する現行の道路交通法は、自動車運転手を貶めるものなのでしょうか。
東海地方に住む30〜39歳の小児科医の方ですが、ハムラビ法典の時代、医師は患者が亡くなれば、死刑であったようですが、この制度はそれに類似するものでしょう。
とのことですが、今回の制度のどの辺が、「医師は患者が亡くなれば、死刑であった」ハムラビ法典下の制度と似ているのでしょうか。私が知る限り、医師を業務上過失致死罪で処罰するには医師に「過失」があったことを要件とするという基本線を変えようという話はでていないように思うのですが。それとも、大村秀章衆院議員等の「医療紛争処理のあり方検討会」のメンバーに直接コンタクトをとってその真意を確認したところそのようなことを仰っていたということなのでしょうか。
医者=性悪説を前提とするような制度には断固反対であるとのことですが、医療関連事故が起こったときには外部機関でその原因等を調査しましょうというのは「医者=性悪」説とは特段関係がないと思いますがいかがでしょう。自動車事故の時に警察が調査活動等を行うのだって「運転者=性悪」説に基づいているわけではありません。
海外に在住の30~39歳の内科医師の方ですが、この委員会は,厚生省の,厚生省による,厚生省のための委員会で,医療の進歩を妨げ,日本の医療崩壊を決定的にするものである。
とのことですが、厚生省が自己の欲得のために医療安全調査委員会を創設しようとしているということについて厚生省の担当者に直接コンタクトをとって真意を確認したのでしょうか。
甲信越に住む40〜49歳の医師の方ですが、選挙対策の国民受けする制度を安易に作ろうとする議員や政府のやり方には怒りを感じます。
とのことなのですが、医療安全調査委員会を、「選挙対策の国民受けする制度として安易に」創設しようとしているなどの真意を直接確認されたのでしょうか。「選挙対策の国民受けする制度」ということであれば、こんなマニアックなところではなく、もっとわかりやすい部分で作りそうなものだと思いますが。
関東にお住まいの40〜49歳の医師の方ですが、助けるために行って助けられなかったら殺人罪ではあまりにもひどすぎる。レスキュー隊は助けられなかったら殺人罪ですか?捜索隊は助けられなかったら殺人罪ですか?警察官は守りきれなかったら殺人罪ですか?
とのことですが、私が知る限り、「医療紛争処理のあり方検討会」のご提案はそのように大胆に刑事実体法の改正を求めるものではないように思います。大村秀章衆院議員等に真意を確認してのご判断なのでしょうか。
近畿にお住まいの40〜49歳の医師の方ですが、 産婦人科がいなくなった原因は激務に見合わない過剰な訴訟にある。今度はすべての科の医者をなくす気か
とのことですが、直接大村議員にコンタクトをとってその真意を確認したらよいのではないでしょうか。私には、訴訟になる前に、医療ミスにより患者が亡くなったのかどうかがわかる方が訴訟の数は減少するように思いますが。
近畿にお住まいの20〜29歳の医師の方ですが、自分たちの利益しか考えず、実際の現場のことを理解していないし、しようともしていない。
とのことですが、「自分たちの利益しか考え」ていないとか「実際の現場のことを理解」しようともしていないというのは、これも直接コンタクトをとってその真意を確認した上での発言でしょうか。
近畿にお住まいの40〜49歳の大学病院勤務医師の方のご発言ですが、知識のない警察官にはまかせられない
とのことですが、与党案は「知識のない警察官にまかせ」ようというものではなく、知識のある方々からなる調査委員会でまず調べましょうというものではないかと思います。それとも、この方は、直接コンタクトをとって、「今回提案した制度は、知識のない警察官に医療事故の処理を任せることを目指したものだよ」と聞き出したということなのでしょうか。
北陸に住む30〜39歳の医師の方ですが、第一線の臨床の場で働く医師で、このような組織の設立に賛成する人が居るとは思えません。
とのことですが、そんな「第一線の臨床の場で働く医師」の意見を十把一絡げで表現するのは危険すぎます。ブログ持ちなら医療系ネットイナゴの餌食です。
近畿にお住まいの大学教員の方ですが、 不幸な事故の再発を防止することと、責任者を吊るし上げることは別の枠組みでやっていただきたいです。
とのことですが、与党案では、医療安全調査委員会で「責任者を吊るし上げること」を予定しているとの情報はどこから入手されたのでしょうか。原案を見る限り、責任者を糾弾する場として活用されるとはにわかに信じがたいのですが
関東にお住まいの50〜59歳の内科医の方ですが、 実際に現場で働いている人間の意見も聞かずに何が医療の安全か.たわけたことを.
とのことですが、「医療紛争処理のあり方検討会」のメンバーが実際に現場で働いている人間の意見も聞かずに医療安全調査委員会を作ろうという案を作ったとの情報はどこから仕入れたのでしょうか。一般論としていえば、与党も野党も、法案を作り上げるに当たって、現場で働いている方々を呼び出してヒヤリングをしていることが多いですが。
北陸にお住まいの40〜49歳の医師の方ですが、司法や警察やメディアの一部は医療の結果を医療関係者のみに責を負わせ、罰すれば医療の質が改善すると考えているように見える
とのことですが、医師に結果責任を負わせれて医師を罰すれば医療の質が改善すると考えている人はいないと思いますが、直接これらの職業の方にコンタクトをとって確認をされればいいのではないでしょうか。
東北にお住まいの40〜49歳の医師の方ですが、 「悪の黒幕を倒せば、正義と平和が訪れる。」「正しく呪文やアイテムを使えば、怪我も病気も、死んだ人さえもすぐに回復する。」というドラクエ脳のまん延が医療を滅ぼします。
とのことですが、今回の与党案がそのような「ドラクエ脳」に基づいて作成されたものとはにわかに信じがたいです。これも大村議員らに直接コンタクトをとってその真意を確認した上での発言でしょうか。
四国にお住まいの30〜39歳の医師の方のご意見ですが、私たちは患者を殺すために医療をしていません。それがわからないのでしょうか。
とのことですが、殺すために医療行為を行っていると判断したら、業務上過失致死罪ではなく、殺人罪を適用します。すなわち、業務上過失致死罪の成否を問題とするというのは、医師達は「患者を殺すために医療をしてい」ないということは一応認めた上のことです。
中国地方にお住まいの50〜59歳の私立大学教員の方のご意見ですが、 処罰感情や敵討ちは世の中を悪くするだけです。そういう感情が沸き起こることは仕方がありませんが、安易に外へ吐き出して満足し、向き合って克服しようとする努力を怠るのは、人格の幼稚さの現われです。ましてや規範の根底に据えようとは、そんな国に未来はありません。
とのことですが、刑罰制度自体を否定されるのでしょうか。
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