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【社説】

太田農相問題 懲りぬ『事務所費』また

2008年8月27日

 波乱含みの臨時国会を前に際どい話が持ち上がった。太田誠一農相の事務所費問題だ。前政権時と同じような光景に国民はあきれている。処理を間違えれば、福田政権は深刻な打撃を被る。

 事務所費問題は自民党議員が特に拒否反応を示す用語だろう。安倍前政権下では、佐田玄一郎行政改革担当相、松岡利勝農相、赤城徳彦農相が相次いで辞任などに追い込まれた。そのこともあって昨夏の参院選で自民党は大敗し、衆参ねじれに苦慮し続けている。

 悪夢再びの怪しい風が吹く。

 太田農相の政治団体が当時政策秘書だった秘書官の自宅を事務所として届け、二〇〇五、〇六年分をはじめ事務所費など約四千八百二十万円の経常経費を計上していたことが分かった。

 政治資金収支報告書に事務所費や光熱水費など経常経費の領収書添付は必要のない時代が続いていた。それをいいことに表に出したくない支出を経常経費として処理する「裏金手法」が横行していたとされる。深刻な政治不信を踏まえ、人件費を除く全領収書の公開が昨年の法改正で決まった。

 今回のケースは法改正前なので公開義務はない。ただ国民の厳しい視線を考えれば、進んで説明すべきだろう。経費は実際に支出していることなどを理由に農相は「問題は全くない」と主張しているのだから、なおさらだ。支出の裏付けを明確にしないと、農相の言葉の信ぴょう性が疑われる。

 野党は辞任を要求。公明党内からも「一刻も早く説明を」と厳しい声が飛ぶ。国民に納得してもらえなければ進退問題に発展するのは避けられまい。農相は「消費者がやかましい」と発言し物議を醸したばかりでもある。

 改造で再スタートした政権の痛手は大きい。依然芳しくない内閣支持率が事務所費問題の再燃で一層低下しかねない。与党内での「福田離れ」が加速すればいよいよトップの統率は効かなくなる。

 与党内調整がつかず、迷走を続けた臨時国会の日程は九月十二日召集、会期七十日間でようやく決着した。インド洋での給油活動継続法案や経済対策で長期を求めた首相が公明党に譲歩した。自公連立がきしむ。農相問題でも野党の攻勢にさらされる。

 ことは首相の任命責任に直結する話である。事実関係の解明へ自ら動かず、得意の様子見を決め込んでいては、厳しい国会を乗り切れるはずはない。

 

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