東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

米大統領選挙 指導力の再生問われる

2008年8月27日

 米大統領選挙の候補者指名を行う民主党大会が始まった。共和党大会も続いて開かれる。オバマ、マケイン両候補互角のレースでは、国際社会で低下する米国の指導力の再生も問われる。

 星条旗あふれるお祭りが四日間続くそれぞれの党大会だが、焦点は「候補者の人物像を売り込めるか」「政策の中身を明快にできるか」の二点だ。

 民主党のバラク・オバマ上院議員の場合は、黒人の父、白人の母、外国で育ちミドルネームは「フセイン」、という多面性もあってまだ一つの「オバマ像」が国民の間に定着しているとはいえない。「イスラム教徒では」との根拠のない誤解も一部に残るという。

 政策面では、六月に指名を確定して以来、イラク米軍撤退など外交、銃規制など内政問題で政権移行をにらんだ柔軟発言が相次ぎ、「変節」とも批判された。

 大会直前には上院外交委員長を務める重鎮バイデン上院議員を副大統領候補に指名し、弱点とされる外交問題を補完した形だが、現実路線が一層強まり「変革」の看板に影響する懸念も残す。

 大会初日には健康不安を抱えるケネディ上院議員も会場に駆けつけ「夢は生き続ける」と演説し、民主党政権奪還へ奮起を促した。クリントン上院議員演説、最終日のオバマ氏の指名受諾演説でどこまで具体性を示し、結束をアピールできるかが課題だ。

 共和党のジョン・マケイン上院議員の場合は、四期の議員活動、二度目の大統領選出馬で人物像はすでに浸透している。ベトナム戦争の英雄、超党派の議会活動、一匹狼(おおかみ)。過去の政治資金疑惑など負の面も含めて「マケイン像」は一般国民に共有されている。

 政策面でも、イラク情勢が米軍増派作戦で好転していることが支持につながっている。グルジア情勢が争点に浮上する機運もあり、指名受諾演説では、外交手腕を最大の武器にオバマ氏との違いを訴えるとみられる。

 次期大統領は、サブプライムローン問題から波及した国際的金融不安、出口の見えないテロとの戦いへの対応に直面する。いずれも米国一国では解決できないものばかりだ。

 ロシア軍のグルジア・南オセチア自治州侵攻で緊迫する国際情勢には、冷戦思考を超えた紛争解決の知恵が求められる。党大会を通じ世界をリードするにふさわしい指導者像を提示してほしい。

 

この記事を印刷する