太田誠一農相の政治団体が、本来は家賃が発生しない場所を事務所として届け出て、多額の経常経費を計上していた問題が発覚した。昨年5月に自殺した松岡利勝元農相や、辞任に追い込まれた赤城徳彦元農相の事務所費疑惑と同じ構図だ。野党は太田農相の辞任を求めている。
福田康夫首相は26日、公明党との調整が難航していた次期臨時国会の日程について、9月12日に召集し、会期は70日間とする方針を正式に表明した。臨時国会では農相問題などで野党側が攻勢を強めるのは必至で、新たな火種を抱え込んだ福田政権は危険水域に入った。
農相の政治団体「太田誠一代議士を育てる会」は、農相秘書官の都内の自宅を「主たる事務所」にして、2005、06年の2年間で事務所費などの経費約2345万円を計上していた。
農相は閣議後の記者会見で「個人的には問題はないと思っている」として、辞任する考えのないことを強調した。今後、事務所費の内訳などを公開する意向も示した。農相には説明責任を果たして、疑惑をぬぐいさるよう強く求めたい。
先の内閣改造で農相に起用された太田氏は、食の安全に関連して「消費者がやかましい」と発言して、批判を浴びたばかりだ。
自民党の麻生太郎幹事長は「(関西以西では)詳しいという意味」と擁護したが、野田聖子消費者行政担当相が「日本の北から南まで皆さんがわかる日本語を使わなければいけない」と反発するなど、この問題もなお尾を引いている。
農相の今後の対応によっては、首相の任命責任が厳しく問われる事態も予想される。
臨時国会の日程はようやく決まったものの、インド洋での海上自衛隊の給油活動を延長する法案の取り扱いなどの方針決定は先送りされた。国会日程をめぐって与党内の調整にこれほど手間取るのは異例で、首相の求心力低下を示している。
民主党などが反対する給油延長法案の会期内成立は困難な情勢だが、臨時国会は2回、会期を延長できる。首相は公明党を説得するだけではなく、給油活動延長の意義を国民に訴え、理解を求める必要がある。