社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:農相の事務所費 「問題ない」では納得できない

 また農相か、とあきれた人は多いだろう。太田誠一農相の政治団体をめぐる不明朗な事務所費の実態が26日明らかになった。太田農相は「問題があるとは思っていない」と語ったが、納得のできるものではない。

 太田農相の政治団体は05、06年を含む5年間、東京都内にある秘書の自宅を事務所として届け出て、事務所費など計4828万円の経常経費を計上していた。しかし、ここに事務所としての専用スペースがないことを農相側も認めている。

 昨年5月、自殺した松岡利勝元農相は家賃が要らない議員会館に資金管理団体の事務所を置きながら、多額の事務所費や光熱水費を計上していた点を追及された。後任の赤城徳彦元農相は実家を事務所として多額の経常経費を計上し、昨年8月、辞任した。今回も指摘されているのは、ほぼ同じ問題といえる。

 太田農相は事務所を移転させる考えを示唆したが、政治資金規正法を理解していないのではないか。

 秘書宅に事務所を置いているのが問題ではない。例えば備品・消耗品費を05年、409万円も使ったと政治資金収支報告書に記載しているが、事務所として本当にそうした実態があったのかどうかが疑問視されているのだ。実態がないのなら報告書の虚偽記載であり規正法違反の行為だ。

 本当は表に出したくない支出を事務所費につけ替えたのではないか。一連の問題の本質はここにある。

 松岡氏らの問題を契機に規正法は昨年の改正で、09年1月以降、国会議員の関連政治団体については人件費を除く全支出に領収書の添付・公開を義務付けるようになった。

 だが、改正前も事務所費などに関しては1件5万円以上のものは添付はしないものの領収書を3年間、保管することになっている。農相が「経費はすべて実際に支出している」というなら、領収書を明示して説明すればいいのだ。

 松岡、赤城両氏はそれができず、野党から追及され続け、昨夏の参院選で自民党が惨敗する要因にもなった。太田農相がそれを踏まえ、自ら襟を正し、きちんとチェックしていたのかどうか。疑問を持つ。

 太田農相は「消費者がやかましいから」発言でも批判を浴びた。この発言も、けじめはついていない。資金問題と併せ野党が臨時国会で農相を厳しく追及するのは当然だろう。

 福田康夫首相が太田農相の起用に当たって事前に十分チェックしていたのかどうかの疑問も残る。首相の任命責任も問われる場面だ。

 首相は「太田農相が一政治家としてきちんと説明すべきだ」と語った。しかし、どこかひとごとのような対応ではないのか。これでは福田首相もまた、参院選の教訓を生かしていないことになる。

毎日新聞 2008年8月27日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報