厚生労働省は26日、一般会計総額で前年度比3・7%(8292億円)増の22兆9515億円とする09年度予算の概算要求を公表した。社会保障費の伸びを2200億円抑制する政府方針は堅持する一方、医師不足対策など社会保障分野で政府が緊急に取り組む「五つの安心プラン」の関連予算には3890億円を求めている。
政府予算全体で3300億円の「重要課題推進枠」には、五つの安心プランを軸に1860億円を要求する。産科・救急・へき地医療を担う勤務医への財政手当てといった医師不足対策が柱。対象の医療機関には手当を支給する仕組みを整備してもらい、分娩(ぶんべん)1回につき1万円を補助する制度などを列挙した。
新型インフルエンザ対策は、前年度比9倍増の598億円。抗インフルエンザウイルス薬の備蓄や新たなワクチンの研究開発に482億円を盛り込んだ。【佐藤丈一】
厚生労働省は09年度予算も、概算要求段階では社会保障費の伸びを2200億円抑制する路線を踏襲したが、抑制方針は砂上の楼閣なのが実情だ。中小企業の政府管掌健康保険に投入するはずの国費1000億円を大企業の健康保険組合などに肩代わりさせることが大前提なのに、実現する見通しは立っていないからだ。
肩代わりは08年度予算にも組み込まれた。先の通常国会に提出された健康保険特例措置法案は、750億円を健保組合が、250億円を公務員らの共済組合が受け持つことになっている。2200億円削減ノルマのうち、計1000億円分を健保・共済の肩代わりでしのぐ構想だ。しかし、野党が「社会保障費削減ありきだ」と反発し、同法案は審議入りすらできず、臨時国会での成立も絶望的となっている。
今月、西濃運輸健康保険組合が高齢者医療費の負担に耐え切れずに解散に追い込まれるなど、健保組合の財政は悪化傾向にあり、健康保険組合連合会は「肩代わりの恒久化」に猛反発している。にもかかわらず、厚労省は09年度も1000億円を肩代わりさせる机上の計画を立てた。【吉田啓志】
毎日新聞 2008年8月27日 東京朝刊