◎減らぬ振り込め詐欺 対策再点検の必要あるのでは
「振り込め詐欺」に対して、そのように名称が統一されたのは二〇〇四年で、同時に周
知の徹底や対策も講じられたが、全国的にも減るどころか高止まりの傾向にあるといわれる。
石川、富山両県も同様だ。今年七月末現在で、石川県ではとりわけ前年同期比四十八件
増の九十六件、被害総額もほぼ倍増の約八千万円となり、過去最悪のペースになっている。富山県では前年同期と同じ九十七件だが、被害総額はやや増加して約一億一千七百万円である。
手口が巧妙化したといわれるが、追い詰められた息子や孫を装い、家人からだまし取る
のが基本パターンのようである。このような単純ともいえる詐欺がなぜ減らないのか。低い検挙率を引き上げることと被害を未然に防止する両面から対策を再点検する必要があるのではないか。
メディアの報道や警察の防犯活動などを通して振り込め詐欺が広く知られるようになっ
たが、被害者の28%が金融機関の職員らによって詐欺の可能性を指摘されながら送金してしまうとの、にわかに信じ難い実態調査もあるそうだ。
下等動物は能力に限界があり、絶対に過ちを起こさないという。人間はそうでないから
詐欺を知っていても、あれこれ考えるために偽電話で救いを求める悲鳴を聞かされると、引きずり込まれてしまうようだ。
心理学や、新しく登場した被害者学等々から対策を見直したい。広域犯罪のため、警察
庁によると、今年上半期の検挙率は10・6%と低い。法改正で振り込め詐欺犯人の口座を凍結し、被害者にお金が返還されるようになったが、検挙率も上げねばなるまい。
石川県警金沢西署は来月から毎月初めの三日間を「地域安全の日」に指定し、管内の交
番や駐在所の署員を一斉に各家庭へ巡回訪問させ、振り込め詐欺や交通事故の防止を呼び掛けることにした。富山県警では金融機関などの担当者らも参加した振り込め詐欺撲滅の対策会議を開き、連携強化や防止策のイロハの徹底を改めてはかることにした。警察任せでなく、皆で防止に当たりたい。
◎農相の事務所費問題 納得できる説明がいる
安倍内閣で閣僚が相次いで辞任に追い込まれた政治団体の事務所費問題で、今度は太田
誠一農相に不明朗な処理が浮上した。臨時国会の会期が固まり、緊急経済対策をはじめ重要課題に取り組もうとする大事な時期に、再び事務所費問題の対応で混乱している場合ではない。農相は「透明性が確保されており、領収書も公表する」と釈明したが、疑問を抱かれている経費の使途について早急に明らかにしてほしい。もし説明できないなら進退問題に発展することは避けられないだろう。
政治資金規正法改正で二〇〇九年分からは国会議員関連の政治団体については全ての支
出に領収書公開が義務づけられる。その趣旨は政治資金の「出」の部分を分かりやすくすることに尽きる。今さら説明できないというのでは、国民も納得しないのではないか。
今回は当時政策秘書だった農相秘書官の自宅を政治団体の事務所として届け出、二〇〇
五、〇六両年分の事務所費など計二千三百四十万円の経常経費が計上されていた。秘書官の自宅を事務所とすること自体は不正ではないが、農相は家賃を払っていないことや専用スペースがないことを認めた。人件費も計上されているが、専任の事務職員はいなかったらしい。事務所としての使用実態が乏しければ、架空経費を疑われるのもやむを得ない面がある。
一連の騒動の時に国会議員は自らの政治資金の支出状況を詳細に点検したはずだ。太田
農相がいま指摘されている事柄を事前に把握し、「透明性は確保されている」と認識していたとすれば国民の感覚からずれていると言わざるを得ない。先の「消費者がやかましい」発言と合わせ、十分な説明ができなければ閣僚としての資質に大きな疑問符がつくことになる。
福田康夫首相も内閣改造で当然、事務所費問題の「身体検査」には神経をとがらせたは
ずだ。後を絶たない事務所費問題とその対応をめぐるゴタゴタに国民はうんざりしている。「政治家個人の説明責任」と傍観し、対応を誤れば首相の求心力や支持率は一気に低下しかねないだろう。