英国のリバプールといえば、ビートルズを生んだ街として知られる。メンバーの故ジョン・レノンさんやポール・マッカートニーさんが育った家などを保有・管理しているのが、ボランティア団体「ナショナル・トラスト」だ。
地区責任者のサイモン・オズボーン氏に先日、東京で会う機会があった。さいたま市にあるジョン・レノン・ミュージアムのイベントに合わせて来日したのだった。
ジョンさんの家は人手に渡っていたが、売りに出たのを夫人のオノ・ヨーコさんが買って、ナショナル・トラストに寄付した。当時の状態に改装して公開しているという。
ビートルズの二人の家についてサイモン氏は「世界の音楽を変えた二人の出会いなどを後世に伝えるとともに、当時の英国の一般的な住宅を残す意味もある」と語った。ナショナル・トラストは、市民の会費や寄付で歴史的建造物や自然を保全している。
英国を手本に日本でも、同様の活動が遅ればせながら広がっている。倉敷市では、「倉敷町家トラスト」が空き家となった町家の再生に乗り出し、宿泊施設によみがえらせるなどしている。
サイモン氏は「日本でも頑張ってほしい」と期待を込めた。幅広い市民の参加によって地域の大切なものを守る仕組みは、成熟した社会に欠かせない。