何とももたついた末の決着である。内閣改造から1カ月近くを経て秋の臨時国会の日程がやっと固まった。早期召集で十分な会期幅を取ろうとした福田康夫首相と、慎重な公明党の対立がこじれた結果、9月12日召集、会期幅70日間という折衷案で落着した。
焦点のひとつとなる新テロ対策特別措置法の期限延長問題を乗り切るには会期の延長が必要とみられ、首相にとって厳しい状況となった。会期末に政権が衆院解散含みの緊迫した状況を迎えるとの見方も少なくない。首相自らがまずは国会の最優先課題を明確にすることが、何よりも肝心だ。次期衆院選の争点につながるテーマの提示こそ、先決である。
そもそも国会日程は1日の内閣改造と同時に決めるべきものだった。インド洋で海上自衛隊による給油活動を行う根拠法となる新テロ特措法の期限延長を処理するため、首相は早期召集で3カ月程度の会期を確保しようと考えた。
ところが「年末・年始」解散を探る公明党が次期国会で給油延長を先送りする思惑から9月下旬の召集、会期も60日程度と主張したため、譲歩を迫られた。給油延長自体は慎重に検討すべき課題だが、政局の思惑優先の先送りというのでは、説得力に欠ける。公明党が早期召集を渋ったのは、創価学会幹部を提訴した矢野絢也元委員長の野党による国会招致を警戒したため、との見方もある。内閣改造で「安心実現」を掲げながら、日程調整に時間を費やし、国会論戦まで40日以上を要するとは無責任ではないか。
もたつきの要因は、国会のメーンテーマに何を据えるかの腰がもうひとつ定まらぬ首相の煮え切らぬ態度にもある。改造内閣はいわゆる小泉改革路線と一線を画し、消費税増税を意識した布陣だ。しかし、衆院選を控え税制の抜本改革が動く気配はなく、むしろ、大型補正予算の編成など与党からの歳出抑制の見直し圧力に直面している。首相は財政規律を重視する姿勢をにじませている。方向性をきちんと打ち出さないと、経済・財政政策をめぐる路線の混乱は収まるまい。
首相が看板政策と頼み、次期国会の立法化を目指している消費者庁構想も、具体像はなおはっきりしていない。中国製ギョーザ問題をめぐる中国での被害発生の公表遅れの国民への説明などもこれからだ。こうした諸課題の何に政権を懸けてのぞむのか、メッセージが伝わってこないのだ。
首相が国会運営に行き詰まり、内閣支持率がさらに低迷すれば、年内に退陣論が加速するとの見方が与党には広がりつつある。そんな中で活路を見いだすには自ら早期に民意を問う決意を示し、政策の方向を国民に語るしかなかろう。与党への配慮だけではとても立ち行かぬ状況である。
毎日新聞 2008年8月27日 0時04分