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【話題のニュース】

五輪放送 識者はどう見た 

2008年8月26日 07時06分

 エース級のアナウンサーはもちろん、芸能人から五輪メダリストまで、豪華に現地に派遣したNHK、民放の北京五輪中継が終わった。「頑張れ、ニッポン」の連呼で、さぞかしお疲れのことだろう。開会式の口パク“偽装”から、金メダルで高視聴率を記録したソフトボールまで、いろいろあった五輪放送。放送評論家・志賀信夫さん、本紙コラム「からむニスト」を執筆していたライター・高橋ゆかりさん、放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんの識者三人に総括してもらった。

■放送評論家・志賀信夫氏 臨場感よく伝わる

 視聴率(瞬間)が最も高かったのは、開会式の48・2%。多くの人が派手な仕掛けと演出を見た。その意味では、今回の五輪をスポーツの祭典というより国家的大行事と位置付けた中国の狙いは「成功」したといえるだろう。

 今回は視聴者心理が明確に表れた五輪だったように思う。つまり視聴者の見たいと思う場面と視聴率の数字がピタリと一致した。例えばソフトボール。日本が優勝してエースの上野由岐子投手が喜ぶ場面などで瞬間最高視聴率を記録している。

 中継するテレビ局側は、競技の臨場感をうまく伝えたのではないか。レスリングの吉田沙保里選手は小柄だが大きく見えたし、野球中継を見ていると、韓国が日本に勝つだろうな、と思った。

 これはテレビの魔力というほかないが、東京五輪に次いでアクチュアリティー(現実性)を強く感じた。開催地が日本に近いという「地の利」もあり、カメラなど機材を運ぶにしても便利だったろうし、日本国内と同様の中継ができたのではないか。時差がほとんどなかったこともテレビ局側に有利に働いたと思う。

 ただ残念だったこともある。NHKは午後七時のニュース枠から五輪一色で、あまりにも五輪を尊重しすぎている印象を受けた。公共放送としてニュースは通常通り伝えるべきだ。民放も競技中に何の遠慮もなくCMを入れていた。商業放送とはいえ、少なくとも二十分や三十分は辛抱すべきだと思う。

■ライター・高橋ゆかり氏 青山アナが一枚上

 現場のキャスターでは、NHKの青山祐子アナウンサーのメダリストへのインタビューが一枚上だった。長くスポーツを担当した経験、ベテランの味を見せた。民放女子アナは、努力を重ねている選手に対してインタビューするレベルに達していない。

 民放のスタジオキャスター陣は、総じてイマイチの印象。日テレはNHKを辞めた堀尾正明アナが話題を集めたが、嵐の桜井翔の陰に隠れ持ち味が出し切れなかった。TBSの中居正広は、周りを女性アナに囲まれている印象しかない。

 フジの古田敦也さんは、球界では知性派で知られたのに、コメントは普通。テレ朝の松岡修造さんは、いつも通り熱いな、という感じ。テレ東の荒川静香さんは、コメンテーター止まりだった。

 中継では、NHKが競技終了後のスタジオへの切り替えが早すぎて、余韻がなかったのが残念。無言でも良いから、競技終了後の会場の様子を映すなどしてほしかった。

 開会式は、口パクなどいろいろ言われているが許容範囲と思う。ただ、閉会式で歌う歌手を見て、「口パクかな?」と疑いの目で見てしまったが…。

■放送プロデューサー・スペクター氏 日本人ばかり集中

 開会式の演出は、トータルでは評価してもいいが、必ずしも中国のノウハウではないと思う。総監督を務めた中国人映画監督だって海外で活躍している人。エキストラやスタッフはたくさんいただろうが、「さすが中国」といったところは人数以外は何もない。きれいだったから批判のしようがないが、聖火の最終ランナーがダライ・ラマだったらきれいにまとまったのに。

 英はBBC、米は四大ネットの一つというように、ほとんどの国は一つのテレビ局だけが放送する。NHKと各民放にばらまくから、はしゃいでしまう。みんながよいしょムードで気持ち悪い。民放のはしゃぎ過ぎよりは、NHKの抑制したところを評価せざるを得ない。

 五輪に限らず、日本のスポーツ報道は非常に幼稚。見ない人に見させてどうするという気がする。タレントを使うのは、若い人に見てもらって視聴率を稼ぐため。(局側に)物足りないという不安と思い込みがある。日本人選手がメダルをとることばかりに集中し、スポーツとして見ているよりもイベント感覚だ。

 野球がメダルを逃してやっと批判的な声も出てきたが、米のソフトボールがなぜ強いのかといった背景の話や中国の街ネタは少なかった。日本人選手中心で、目に見えるものだけを取り上げるのではなく、もう少し幅広い伝え方ができないか。

(東京新聞)

 

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