「煮物を柔らかく仕上げるワザ追求!」
では、家庭で最もゴムのように硬くなりやすい「煮物」の場合、どうすればよいのでしょうか?
調理科学の研究者が煮物をやわらかく仕上げるコツを追及しました。すると、輪切りが定番の煮物の場合、内部温度60℃で仕上げても身が反り返ってしまい、硬くなってしまうことが分かりました。調理科学の研究者も経験したことがないほどに、イカは熱の影響を受けやすい食材だったのです。
ところが発想を転換し調理してみたところ、輪切りのイカが身も皮も反りかえることなく、理想の柔らかさに仕上げることができました。
柔らかい煮物を作るには「まるごと加熱」
柔らかい煮物を作るコツは、イカを切らずに、丸ごと加熱することです。
切ってから加熱すると縮みやすいイカも、まるごと加熱すると縮みにくくなります。しかも、加熱は水から行います。すると、温度計がなくても、イカの内部温度が60℃になるタイミングを目で見極めることができるのです。
60℃を見極める目安は、イカの形です。タンパク質の変性が始まることで、イカ全体が丸みを帯びてくるのです。
※作り方は、実習コーナー「イカのまるごとゆで」を参照してください。
イカの産地の郷土料理にも、まるごと調理する手法が多く見られます。たとえば、壱岐で最もポピュラーなスルメイカの食べ方は、その名も「まるゆで」。
水を張った鍋に、イカをまるごと(ゲソも肝も全てついた状態)入れて茹でる料理です。全体が丸くなったら、切ってしょうゆをつけて食べます。
また、「まるゆで」を使って和え物も作ります。代表的なのは「まるゆで」したイカを切って、大根、ごまみそで和えた「いかよごし」という料理です。まるごと調理してから、切って使うことは、イカを柔らかく仕上げる産地の知恵でもあったのです。
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