北朝鮮が核無能力化措置の中断を発表したことは、拉致問題をめぐる日朝協議にも影響を与えそうだ。政府はこれまで6カ国協議の枠組みに日朝協議を組み込む形で、核と拉致問題が並行して進展するシナリオを描いてきた。6カ国協議全体が停滞すれば、12日の日朝実務者協議で合意した拉致の再調査の先行きにも影響する。
外務省の児玉和夫・外務報道官は26日の記者会見で「14日に無能力化を中断したことは(北朝鮮発表の)事前に承知していた」と明かした。外務省幹部は「核は核のこと。あくまでも核(をめぐる協議)の流れの中での出来事だ」と表向きは拉致問題に直結しないと強調する。だが、日本はこれまで、米朝協議の進展を背景に、米国の働きかけをテコにして、拉致問題の前進を図ってきただけに戦術の見直しを迫られる可能性もある。
グルジア紛争を機に米露関係も悪化しており、ロシアも参加する6カ国協議をめぐる環境は厳しさを増している。拉致問題打開のための独自の外交カードに乏しい日本政府はさらに追いこまれそうだ。【古本陽荘】
毎日新聞 2008年8月26日 20時19分