米国ニューヨークを本拠に、創業130年以上の歴史を持つ世界有数の投資銀行、ゴールドマン・サックス。米国をはじめ、アジア太平洋、欧州の主要都市に現地法人などを有する同社では、文化や人種・民族、宗教、性別などにかかわらず優秀な人材を確保し、平等な活躍の場を提供することを目的に、2001年「グローバル・リーダーシップ・アンド・ダイバーシティ(GLD)」を立ち上げた。
ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス 人事部 ヴァイス・プレジデント グローバル・リーダーシップ&ダイバーシティ 東京マネジャーの福本多起さん(写真:皆木 優子、以下同)
GLDはニューヨークのトップ直轄の組織であり、現在、東京オフィスでマネジャーを務めるのは、ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス人事部のヴァイス・プレジデントの福本多起さんだ。GLDが設置された背景を、福本さんはこう話す。
「ゴールドマン・サックス(GS)で働く社員の帰属する国の数は、国連加盟国およそ200カ国に匹敵するほどです。それぞれの文化を尊重し合わなければ、当社が重視するチームワークの維持や強化は図れません。また、近年では女性経営者が増えるなど、顧客やそのニーズも多様化しています。それに応えるべく企業競争力を高めるためには、優秀な人材の確保が必須です。そこでGLDでは、マイノリティーと見られる女性の活躍を支援し、誰もが働きやすい職場環境を整えることに注力しています」
女性のキャリアの中で、妊娠と出産がハードルになると考える向きはまだ多い。そこでGSには、キャリアの相談ができる通常のメンター(助言者)だけでなく、妊娠・出産や育児に伴う不安や悩みを中心に相談できるマタニティーメンターがいる。「妊娠中の社員が希望すれば、出産、育児を経験している女性がマタニティーメンターとなり、体調が悪い時はどうしたらいいか、出産・育児休暇を取る際の引き継ぎの進め方など、きめ細かなアドバイスを受けることができます」と福本さんは言う。
育児支援制度の中身を分かりやすく記載した「ペアレント・ツールキット」も用意している。「これはワーキングマザーだけではなく、男性も含めたワーキングペアレンツを対象としたものです。育児に関する支援は、男女がともに考えていくことを意識しています」と福本さん。
さらに、昨年からは全マネジャー向けトレーニングプログラム「グレート・エクスペクテーションズ」も開始された。このプログラムでは、妊娠した女性部下に上司がどう対応すればいいのかなどのトレーニングが行われる。福本さんは、「例えば、部下から妊娠を告げられた時、つい『仕事はどうするの?』と聞いてしまいがちですが、まずは『おめでとう』『体調は大丈夫?』と声をかけるといったような初歩的なことから学びます」と言う。
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