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JR新型特急導入は公費でGO!山陰や北海道で成功

2008年8月25日

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写真山陰線に投入された「スーパーまつかぜ」=6月20日午前、鳥取市の鳥取駅、三木写す写真特急「スーパー宗谷」。札幌から大勢の観光客やビジネス客を乗せて稚内駅に到着する=7月1日午後、北海道稚内市、三木写す図

 過疎化や地域経済の低迷に悩む地方自治体がJR在来線への新型車両導入を公費で後押しし、乗客減に歯止めをかけようとしている。島根県や鳥取県はJRに車両製造費を無利子で貸し付けて新型特急を走らせ、乗客増に成功。北海道でも、第三セクターが車両を保有してJRにリースする手法で導入し、人気を呼んでいる。

 6月の平日朝。JR山陰線の特急スーパーまつかぜ2号が鳥取駅に滑り込むと、約280人の通勤客らが次々と降り立った。93キロ西にある米子駅との間を最高時速120キロ、最短57分で結ぶ。

 米子―鳥取間に高速道路はなく、車で2時間はかかる。山陰線は単線で高速運転が難しく、従来は特急でも平均73分かかっていた。カーブを緩やかにするなど安全面に配慮した線路改良も行い、03年に新型車両が導入されると、これまで単身赴任を余儀なくされていたサラリーマンらに歓迎され、自宅通勤に切り替える人も出始めた。

 鳥取県は遠距離通勤する職員に対し特急用の通勤定期相当額の支給を始め、県職員だけで鳥取や米子に勤める100人以上が単身赴任を解消した。

 この車両導入の原資は、県が03年にJR西日本に貸し付けた約36億円の車両製造費。全額無利子で、09年度から毎年約5億円ずつ返済を受け、7年で完済する「優遇プラン」だ。乗客低迷による赤字に苦しむJR西日本米子支社は、この資金を元手に快速用19両、特急用12両を製造し、山陰線の老朽車両を一新。特急の運行本数も1日3往復から7往復に増やした。

 導入直後の03年度の山陰線特急の乗客数は対前年比258%と急増。増発に見合う形で利用者が定着したと判断した同支社は今年3月には特急を8往復半まで増発した。県が01年に試算した「今後30年間で93億円の経済効果」の達成も夢ではなくなった。

 この方式を編み出したのは隣接の島根県だった。旧国鉄時代は、自治体が国鉄に寄付や資金負担することは違法とされていたため車両購入はできず、JRに衣替え後も踏襲されていたが、旧国鉄出身の澄田信義知事(当時)が国を説得して99年にこの制約をはずし、01年に松江に近い鳥取・米子―山口・小郡(現・新山口)間への新型車両導入に成功した。

 今では島根・鳥取両県の山陰線の大半にほぼ2時間おきに新型特急が走るようになり、島根県内の特急利用者も導入前より3〜4割増えた。

 北海道では、国内最北のJR路線に、デンマーク国鉄の協力も得て開発された真っ青な車両が疾走する。00年から宗谷線の札幌―稚内間を走る「スーパー宗谷」だ。

 道やJR北海道などが出資する第三セクター「北海道高速鉄道開発」が車両12両を約21億円で製造・保有し、JR北海道に24年度まで年間8600万円でリースしている。両都市間の所要時間をそれまでの約6時間から最短4時間56分に短縮した。乗り心地も「航空機のビジネスクラス並み」。以前は当たり前だった冬場の運休も減り、06年度の12〜3月期の特急運休はわずか2本、07年度はゼロになった。

 JR北海道には利用者から「座れない」との苦情も寄せられるようになり、01年には、2両を増結するために単独で約3億円を支出した。

 JR北海道は「自然、社会環境が厳しい都市間の輸送でも、高速でかつ定時の運行を確保すれば、信頼性が高まり、航空便や高速バスにも対抗できることが裏付けられた」と喜ぶ。(三木淳)

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