今年はあまり靖国報道がなかったですね。
大掛かりな報道規制が特にあったようにも思えません。福田首相が親中派であることと、北京五輪の関係などから、あまり多くは報じられていないような気もしなくはありませんが。 それでも今まで何度も靖国参拝のことでもめましたね。ナショナリズムが浸透している現代、各国の文化、風俗、習慣、民俗性、おのおのがそれを尊重し、手を取り合うことの何がいけないのか、私には理解に苦しむ部分も正直あります。 よその国の文化を否定し、攻撃することなんて……。もちろん、攻撃的な文化を持つ場合は話が別ですが。 表題の言葉は猪瀬直樹氏の名著にちなんで書いています。猪瀬直樹氏原作『昭和16年夏の敗戦』(文春文庫刊)。これを私は中学校の時、ドラマで知りました。俳優中村雅俊さんが主役。模擬内閣総辞職のシーンはいまだに記憶に残っています。ぜひともDVD化して欲しい名作だと個人的には思っています。フジテレビさん、どうでしょうか……。 終戦後、40年を翌年に控えた昭和58年、毎日新聞夕刊一面に衝撃的なキャッチコピーとともにこの本は出版されました。緻密な取材とデータに基づき、臨場感のある物語になっている名作で、以来、何度も再版を重ねています。ぜひともこの時期に皆さまに読んで頂ければと思います。 それにしても思うのは、昭和16年の段階で敗戦が見えていた、しかも、ほぼ想定した通りに戦争が進み、予測し得なかったのは原爆だけ……というのも何と言えばいいのか、複雑な気持ちになります。 その事実を仮に世間へ公表をしていたら、あんな悲惨な戦争は絶対に起こらなかった。そんな気持ちになります。特に学徒出陣などで、死ななくてもいい人たちまで赤紙で戦地に赴き、文字通りの地獄絵図を体験し、生き残ったのはごくわずか。それを考えると本当に複雑な気持ちになります。何とかして太平洋戦争を止めるができなかったのかと。 そこで気になるのが本書の主役となった模擬内閣。 最初から模擬内閣を作るために召集したわけではなく、初代所長の飯村陸軍中将を始め、召集された各方面の、いわゆる中堅どころが研究を効率的に行うために考案した苦肉の策であったらしいです。 初期メンバーは文官中心でありながら、民間からも何人か集まり、とにかく国が情報をなりふり構わず集め、軍部中心に進んでいる主戦論を止めようとしていたという色彩が見え隠れすることを示唆しています。そして、模擬内閣の各閣僚が数多くのジレンマを抱えながら総戦力の研究を行ったこともことも細かく書かれています。 この本には近年、靖国参拝問題がクローズアップされた際、メディアに出ていた東條英機のお孫さんにあたる東條由布子さんにより注目をより集めた東條英機擁護についても書かれています。それはまた別の機会に書きたいと思いますが歴史を知らなかった私は、東條英機がそんな人だったのか、と初めてここで触れました。 いずれにせよ、負けが見えている戦いなど誰もやりたくはありません。それが人と人とが殺しあう戦争ならなおさらです。けれども当時の世相は、うすうすと日本は弱いのではと皆が感じつつ、それでも戦争という誘惑に足を踏み入れる国の政策を受けいれ、そこにわずかな希望と誇りを見いだそうとしたわけです。 その事実とその真理を、今のわれわれはどう考えればいいのか、いい教訓を示してくれそうな本だと私は思いました。そして今、日本はたしかに戦争をしない国ですが、経済戦争は毎日誰もがやっています。もし、3年後、5年後の経済戦争を総合的に、かつ緻密に予測し得る機関を作ることが可能なのだとすれば、情報化がこれだけ進んだ今の世の中、誰もが飛びつくのかも知れませんね。 あなたは日本の未来をどう予測し、シミュレートしますか?
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