ウミガメの産卵や美しい松林などで知られる美浜町の煙樹ケ浜。ここで陸上自衛隊が、敵船艇の上陸阻止を想定し、地雷を海岸に敷設する水際障害訓練を計画している。戦争を体験した人たちや自然保護グループなどが、抗議活動を続けている。【山中尚登】
同町によると、03年秋、陸自側から訓練の申し入れがあったという。「美浜の自然を守る会」(東原史郎会長)は、ウミガメの産卵にも影響があるなどとして反発。地元や周辺の漁協関係者も漁への影響を懸念した。
陸上自衛隊は06年11月、模擬の訓練を実施。一般公開され、約300人の住民が見学した。守る会は、会場近くで「訓練は、自然の荒廃と平和な生活の破壊をもたらす」などと、抗議活動をした。
現在、漁協との補償交渉などもあって、訓練の実施時期などは決まっていないという。東原会長は「今は大きな動きはないが、いつ訓練が始まるか分からない。監視活動を続けていく」と話す。
元同町議の児玉五郎さん(85)は1944年、広島県呉市の大竹潜水学校に入り、軍事訓練を受けていたが、45年6月に入院し、戦地に向かうことなく終戦を迎えた。終戦の日のたびに戦地で亡くなった友人を思い出すといい、「どこの国との戦争を想定して訓練するのか疑問に思う。憲法で戦う意志がない国(日本)に必要ないはずだ」と訴えている。
毎日新聞 2008年8月22日 地方版