では、次に「バランスシートの連動性」に対する理解をもとに、実際の経営行動を見てみましょう。
――●運転資本の管理
前述したように、資産が増加するときには、負債・資本も増加します。これは表現を変えれば、資産を増やそうと思ったら負債もしくは資本を増やさなければならない、つまりは資金調達が必要になるということを意味します。
あらためて言うまでもないことです。設備投資をするときなどには、当然これを踏まえて資金調達の段取りに入ります。
しかし、日常の運転資本管理の場面では、この単純な原理を忘れがちです。たとえば、事業が順調に成長し、売上が伸びている局面では、それに対応して売掛金や在庫も増加しています。
あるいは、運転資本の管理ができていない会社では、滞留債権や不良在庫の増加により業績不振の状態でも運転資本は膨らんでしまいます。
このとき、資産が増加しているのですから、当然負債(もしくは資本)も増えざるを得ません。知らず知らずのうちに資金繰りが悪化し、資金調達を迫られているのです。
もちろん逆に、意識して運転資本の圧縮に努めれば、資金繰りが改善し、負債の削減につながります。
運転資本管理の重要性については様々な角度から説明がされますが、バランスシートでイメージするのがいちばん分かりやすいのではないでしょうか。