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【社説】

警察の捜査 信頼回復があってこそ

2008年8月26日

 刑事の八割が「市民の協力が得られにくくなった」と感じているという。警察白書は社会状況の変化を理由に挙げるが、警察の対応や捜査に問題はないのか。市民の協力は信頼回復があってこそだ。

 二〇〇八年版警察白書は全国の第一線で捜査に当たっている刑事約二千五百人が答えたアンケートの結果を掲載した。「捜査活動に協力を得ることは困難と感じるか」との質問に約八割が「困難」と回答している。

 その理由を複数回答してもらった結果、上位には「警察に話をするのが面倒と考えている人が多い」「情報提供に慎重な会社などが多い」ことが挙がった。

 そこから白書は他人への無関心や相互不干渉の風潮が広がる社会の変容や個人情報保護の動きが捜査の壁になっていると指摘する。経済社会のグローバル化が進み、犯罪も組織化・複雑化して捜査する事項が増えたとも述べている。

 捜査が難しくなったのは取り巻く環境の変化もあるが、それだけではあるまい。市民から協力が得られにくくなった原因として信頼の低下を見逃してはならない。

 刑法犯の認知件数は二〇〇二年をピークに減少している。だが「犯罪が減った」と思っている人よりも「治安は悪化した」と感じている人の方が多いのではないか。

 要因の一つに未解決の凶悪事件の存在が挙げられる。東京都世田谷区の一家四人殺人や千葉県市川市の英国人女性死体遺棄のほか、今年春には愛知県豊田市と京都府舞鶴市で女子高生が殺害される事件が相次いで起きた。

 いずれも犯人は逃走中で、警察への信頼を損ねる結果になっている。これらの事件は初動捜査のあり方を検証しなければならない。

 捜査の端緒となる一一〇番通報は〇四年から受理件数が減っている。犯罪件数の減少もあるが、信頼の低下が影響してはいないか。

 今年四月、東京都江戸川区の女性が監禁されたとみられる事件で女性は山梨県警に一一〇番したが、行方不明のままだ。

 栃木県鹿沼市では車が水没、車内の女性は水死した。一一〇番通報はあったが、警察は現場に行かなかった。

 捜査の手法や通報の対応で問題ある事案を調べ、対策を講じなければ不祥事は再発するだろう。

 白書が捜査の困難さを訴えても、言い訳にしか聞こえてこない。科学捜査や広域捜査の強化は必要なことだが、まずは警察が信頼回復への努力をみせることだ。

 

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