子どもら5人が亡くなった神戸市・都賀川の増水事故で、濁流にのまれたが河口付近で救助された同市灘区の小学6年男児2人のうち1人が、背負っていたリュックサックを浮袋代わりにしていたことが分かった。市内の多くの小学校では服を着たまま水に浮かぶ着衣水泳を授業に取り入れ、身近な道具を浮袋に使うことも教えており、日ごろの防災教育が子どもの命を救ったかっこうだ。
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男児は7月28日、塾帰りに河口付近の河川敷で釣りをしていて、午後2時50分ごろ都賀川が突然増水して約200メートル下流まで流された。
小学校などによると、男児は流されている間に背中のリュックサックが浮かんだことに気づいたといい、リュックサックにつかまって水面に浮かんでいるのを、近くの敷物販売会社の社員やトラック運転手らが発見。水面に顔を出すなどして浮いていたところをロープで救助した。
当時、河口付近は都賀川から激流が流れ込んでおり、男児は靴が無くなって足を擦りむいていたが、命に別条はなかった。
着衣泳研究会会長の斎藤秀俊・長岡技術科学大教授によると、リュックサックを使うのは着衣水泳の技術の一つ。背負っても前に抱えても、素材にかかわらず何か物が入っていれば浮力が生じ、頭を水面に出すことができるという。
神戸市では95年ごろから多くの小学校が水泳の授業に着衣水泳を導入、空のペットボトルやビニール袋などを使って浮かぶ訓練をしている。斎藤教授によると、推定で全国約6割の小学校が着衣水泳を授業に取り入れ、自治体の消防職員らが指導しているという。
男児は事故直後、風呂に入るのを怖がっていたが、家族によると今では「事故のことは忘れた」と話し元気にしているという。男児が通う小学校では「着衣水泳の授業が役立ったのなら喜ばしい」と話している。【高山梓、近藤修史】
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