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2008年8月26日

◎舳倉島航路への補助 継続に知恵を絞ってほしい

 石川県や輪島市などが協議会を設置して舳倉島航路の支援の在り方を再検討することは 、舳倉島の価値を見つめ直し、活性化へ本腰を入れて取り組むことを意味する。航路の安定維持に知恵を絞るとともに、これを機に島の魅力を引き出し、交流人口の拡大や漁業の活性化に資する具体策も併せて打ち出してほしい。

 離島支援は定住する住民の生活を守る視点が何より大事だが、本社が派遣した舳倉島・ 七ツ島自然環境調査団によると、他の地域ではみられない動植物の貴重な生態系が保たれ、さまざまな環境変化を観測する地点としても島の存在意義が高まっている。

 豊かな環境は石川の自然のシンボルであり、海女漁にしても石川の漁業の象徴的な営み といえる。県全体からみれば面積も人口もわずかだが、石川県にとってはそれ以上の価値を持つ。日本海の真ん中に位置することから避難港としての役割や不法侵入への警戒など治安上も重要である。そうした位置づけも十分に考慮しながら航路支援を考えていく必要がある。

 国土交通省は「離島航路補助金」で航路支援を続けているが、燃料費高騰や離島の人口 減など新たな状況変化を受け、地元自治体とともに航路支援策を見直すことになった。離島は対岸との距離や文化的なつながり、産業構造など事情は千差万別である。画一的な支援でなく、個別の事情に沿って進めるのは当然である。

 舳倉島の場合、空路もある大きな離島と違い、海上ルートが唯一の交通である。荒天で 冬場は欠航が目立ち、経営安定化には気象条件の壁もある。そうした状況を考えれば経営改善に限界があることも確かである。

 だが、単に赤字を補填し、「生活路線」を維持する発想では島の活路は見いだせないだ ろう。豊かな自然環境を守りながら、バードウオッチングや釣りなど海洋レジャーの魅力を生かし、交流人口の拡大に取り組む必要がある。

 輪島市は輪島マリンタウン活性化計画の中で、定期航路を走る「ニューへぐら」を利用 したクルージングの社会実験も実施する。知恵を出し合い、離島の現代的な価値を追求してほしい。

◎家電リサイクル もったいない希少金属

 テレビや冷蔵庫など法律で再利用が義務付けられている大型廃家電のリサイクル料金が 、十一月から引き下げられることになった。廃家電から回収した金属の価格が上昇したため、廃家電を引き取る大手電機メーカーが料金引き下げで消費者に還元しようというわけである。これを契機に家電リサイクル法の対象家電だけでなく、使用済みの携帯電話や携帯型音楽プレーヤー、デジタルカメラなど小型廃家電のリサイクルにも本腰を入れたい。

 これらの小型廃家電は、自動車や電子機器などの製造に不可欠な希少金属(レアメタル )を多く含んでいるため、「都市鉱山」とも呼ばれる。輸入に頼る日本にとって、小型廃家電は希少金属の新たな供給源になると期待されているが、法律面を含めてリサイクルのシステムはまだ確立されていない。希少金属の鉱脈である多くの小型廃家電が再利用されずに眠っていたり、廃棄されているのはまことにもったいない。

 電気通信事業者協会などのまとめでは、小型廃家電の代表格である携帯電話の回収台数 は二〇〇七年度で約六百四十万個と過去最低だった。携帯に保存した写真を記念に残したり、携帯を電話帳代わりに使う人が増えているためといわれるが、回収台数はピーク時の二〇〇〇年度(約千三百六十万台)の半分以下に落ち込み、土中投棄も相当あるとみられる。

 こうした状況から、環境省と経産省は来年度ようやく、小型廃家電の効率的な回収方法 や採算性などを調べるため、全国数カ所でモデル事業を行う考えという。この点ではむしろ自治体が先行しており、例えば秋田県大館市は東北大やリサイクル会社と協力し、〇六年から携帯電話などの回収、再資源化の社会実験を行っている。政府は地方の先進的取り組みも参考にしてもらいたい。

 中国やインドなどの需要増大で希少金属の価格が高騰している上、産出国の「資源ナシ ョナリズム」も強まっており、日本としては国家的な産業・資源戦略の面からも、廃家電のリサイクルを推進する意義は大きい。


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