ヒマラヤ山脈の麓(ふもと)、中国とインドに挟まれた小国「ブータン」が注目されている。先日、わが家に届いた雑誌の特集もブータンだった。
地球温暖化が深刻化し、原油価格高騰や米サブプライム問題による景気減速など、グローバル経済の将来が不安視される中で、「豊かさ」とは、「幸せ」とは何かをあらためて問い始めたからだろう。
ブータンでは、GNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)といった経済の規模や成長を推し量る従来の物差しではなく、国民の幸せを追求する「GNH(国民総幸福)」というユニークな概念を取り入れている。
二年前、英国レスター大の研究者がはじき出した「国民の幸福度」順位で、ブータンは八位。アジアの中ではトップだった。ちなみに日本は九十位。一位はデンマーク。
先代国王が、従来型の経済発展を目指せば、環境破壊が進み、貧富の差や独自文化の喪失などの弊害を招き、必ずしも国民全体の幸せにつながらないと結論した、と伝えられる。
だがブータンも、経済発展を否定しているわけではない。さじ加減は難しいだろうが、持続可能で公平な社会経済開発、自然環境や文化財の保護などの指針を持っている。発展の速度をコントロールしながら進もうとする姿勢は、他の途上国とはひと味違っている。
世界の流れにあらがってスローライフを実践しているようなブータンだが、近代化、情報化が進んだ時、このままでいられるのか、ちょっと気になる。
(広島支社・秋山清和)