【北京=野口東秀、古川有希】北京五輪最終日の24日、閉幕式を前に開かれた男子マラソンで、中国中央テレビは国内向けの中継を5秒遅れで放送した。チベット問題などへの抗議があった場合に放映しないようにする措置だ。沿道も閉幕日とあって女子マラソンよりも警備を強化し、妨害行為に備えた。コース上の多くの場所に動員された市民が陣取り、“友好的な中国”を醸し出す演出が施され、市民の多くは「五輪は成功した」と口をそろえた。
「五輪は大成功」。マラソンのコース沿いで市民14人中、12人が中国の五輪開催を成功と認識していた。
しかし、「失敗」と明確に回答した者が2人おり、女子大学生(21)は、その理由として「(チベット騒乱やウイグル関連の襲撃事件など)事件があちこちで発生した」と指摘。自営業の男性(30)は「五輪に伴う再開発により友人が強制立ち退きで仕事場を失った」と話すなど、少数だが五輪の“負の側面”に注視する市民もいた。
沿道には、中高年者や学生ら「治安ボランティア」が多数動員された。35キロ地点の知春路では、女子マラソンでも動員されていた同じ団体がそろいのシールを胸につけ沿道前列に座るなど、警備はボランティアを含め女子マラソンを上回ったようだ。コース上では二重のさくに警官らが約10メートル間隔で立った。
邦人の応援者は女子マラソンと同様、36キロ地点に用意された“日本人エリア”で約200人が日中双方の国旗を手に声援を送った。中国国旗にはトラブルを防ぐ「安全措置」の役割を期待したようだ。女子マラソンではこのエリアは日本人専用だったが、トラブルがなかったため、男子マラソンでは中国人も入ることができるようになった。
日本大使館の宮本雄二大使も応援に駆けつけたため、警察当局は不測の事態に備え、複数の警察官が大使の周囲を警戒したが、観客同士のトラブルも発生せず、日本人の応援責任者を務めた柳田洋氏は「何事もなく、本当にほっとした」と胸をなでおろした。
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