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懲らしめるよりご褒美を!『Supreme Commander』Chris Taylorのデザイン論

by Miu @ 2007/6/10 17:00

今年発売されたSupreme Commanderはもちろん、元となったTotal AnnihilationやRPGのDungeon Siege、そのまた前は4D Boxingなど、長きに渡り第一線でゲーマーの記憶に残る作品を生み出し続けているGas Powered GamesのChris Taylor(クリス・テイラー)氏。

海外ゲームファンにはおなじみの彼が、先日GameDailyにて最近のゲームデザインを巡るエッセイを掲載し、そのユニークな文章もあってか話題となっているようです。今週の特集インタビューは、ゲームデザインについての興味深い海外コラムをお届け。

* * * * * * * * *


“Pinball Parlor”

ピンボールマシンは、ボールが三つで始まります。全部を落としちゃったら、ゲームオーバー。アーケードにビデオゲームが登場した頃、自機は三機で、パックマンは三匹で。あれも三つ、それも三つ。三回やられてしまったら、ハイ残念でした!あなたのゲームはもうおしまいです。

それから、家でゲームが出来るようになりました。(デザイナーの)僕らはまだ懲らしめ続けます。まるでリビングのまんなかに、騒がしいアーケードを作っているようでした。まったく、筐体にコイン入れてもらうの忘れてたみたいです。僕らはお構いなしに、プレイヤーを懲らしめ続けました。


“Punishment”

何年も前にGame Developers Conference(GDC、アメリカではこの源流が1987年からある)で、自分も話をしました。スライドで僕が持ってる膨大なゲームコレクションを見せて、この大半は最後までプレイできていないんですって。どういうわけだか、あるところに差しかかると僕は、ゲームを終わらせる気がなくなってしまうのです。

それが、「お邪魔」(Blocker――原注:手間のかかるパズルや、無茶な仕掛けでプレイの進行を妨げようとする部分を、ゲームデザイナーが呼ぶ言い方)。

お邪魔に出くわしたとき僕は、数回挑戦してみてそれでダメだったら、ここは一晩休むちょうど良い機会なんだと思うことにします。そして……なんたることか。ゲームはホコリをかぶり始め、その後プレイされることはないのです。これは僕のコレクションで、ほとんどのゲームに起きた話です。


“Carnival”

それで僕らが業界として、当時誰でも最後までできるゲームを作ることに失敗していると主張するために、GDCでこの話をしました。僕らはたくさんの時間やお金を、買ってくれたお客さんが決して見ることの無い部分につぎ込んできました。GDCの誰かが、本気でこれを何とかすべきと考えてくれたかどうかはわかりません。でも振り返ってみれば、持ち時間全部使ってでも僕はこれについて話すべきでした。

DVDを買った時はどうでしょう?音楽CDや、本とか。いつだって終わりまで見られます。テレビを見たり、雑誌を読んでいて、それを最後までできないなんてことはありません。

想像してみたんです。一体いくら分の価値がある名場面を、僕は一度も見てないんだろうと。どれだけのラスボスがいて、勝利のエンディングを見逃しているんだろうと。自分が思い出せる限りの全部。

なんで?僕は山ほどの言い訳を始めるけれど、突き当たるのはいつだって一つの事実です。クリアできるほど上手くなかったから。僕は鈍いです。間抜けです。出来ないんです。

それから僕は、ゲーム産業が思えば遠くに来たものだと感心するのです。あのカーニバルのコインオペレーション形式の、懲らしめシステムのままに。


“Sisyphus”

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もちろんTaylor氏は、Railroad TycoonやThe Sims、そしてGTAの歴代ブロックバスターを例にあげ、その方向性にかかわらず今のゲームシステムがそれぞれ「鈍い」人に対しても、プレイを妨げない方向に変わり始めているといいます。

ゲームがエンターテインメントとして、プレイヤーを懲らしめることなくご褒美を与えるべき(単に懲らしめないだけでも駄目)といったテーマは、これまでも決して珍しいものではありませんでしたが、この問題の一番の源流が、ビデオゲームの時代以前から続くアーケードの前提にあるという指摘は、日本のゲームファンにとっても広く受け入れられるものではないでしょうか。

そのビデオゲームの領域が今、様々な方向へと大きな広がりを見せる中、それがカジュアルな作品であっても大作タイトルであっても共に、今後の重要な鍵となることは間違いなさそうです。

最後に彼は、30年前に自身のお母さんも一緒にAtariのBreakout(ブロック崩しの元祖)を遊んでいたことに触れ、今再びこのお母さんと共に遊んでもらえるゲームを作ること、意外にもそれが彼の次回作へのヒントでもあるようです。
(ソース: GameDaily: “Reward Players, Don't Punish Them! ”) (イメージ: Flickr)

 
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