2Dゲームの変わらない魅力…『Prince of Persia』Jordan Mechnerのデザイン論
あの2Dスタイルで、とうとうオリジナルが帰ってきたPrince of Persia Classic。今週は80年代のApple II時代に、Broderbundで伝説の2Dゲームを作ってきたJordan Mechner(ジョーダン・メックナー)氏をご紹介。
学生時代にApple IIで手がけたカラテカがヒットし、1989年にリリースしたプリンス・オブ・ペルシャは、その後国内外のゲームデザインにおいても、実は大変幅広い影響を与えています。
当時を懐かしむ海外ゲームファンのみならず、彼の名前に馴染みがない日本のコンソールファンにもなかなか興味深いインタビュー。今度のリメイクを機に、今また2Dゲームの魅力やその可能性について語ってくれました。
当時は画期的な存在、Apple II版Karateka(1984)。このまま左に進むと…
IGN: 初めに、Price of Perisiaの始まりはどういったものだったのでしょう。
Mechner: その前のKaratekaで、僕は中世の日本を舞台にして、あの非日常的で雰囲気のある舞台が成功の大きなカギになったと思いました。なので新しいゲームに相応しい題材を探し、『千夜一夜物語』こそは、自分の知る限りそれまで使われていなかった、素晴らしく豊かで刺激的な世界だと思いついたのです。
それに当時、280×192の4色画面、高さ40ドットといったキャラクターであっても、その建物や衣装がはっきりそれとわかるほど特徴的だったことは、大変素晴らしい利点でした。
IGN: Price of Perisiaで大きな革新の一つは、より現実的なアニメーションを作るためにロトスコープ(実際の動きを撮影して起こす技法)を使ったことでした。現在も大半の2Dゲームで、そのアニメーション自体は大きな進歩を見ていません。どうしてだとお考えですか?
Mechner: 必ずしも単にリアリズムの方向だけではなく、あの時以来2Dゲームのアニメーションでなされた、本当に興味深い作品は実際にいくつかありました。もっと自分だけの独自のスタイルでやりたいアニメーターにとって、2Dの世界は本当に解放された自由な場所たりえます。
IGN: ところでPrice of Perisiaは難しかったです、本当に。振り返ってみて、あの難易度は難し過ぎたと思いますか?それとも、それは今のゲーマー達が単にヌルいだけだと?
Mechner: 今のゲームは、ほとんどどこでもセーブしてすぐにやり直せるような感じで、かなり寛容ですよね。Price of Perisiaにおいては、一度死んでしまったらステージの最初からやり直さないとなりません。
一方で、Price of Perisiaの操作は今のゲームと比較して、非常に正確で緻密なんです。走りながらジャンプするのと立ったままジャンプするので、一体キャラクターが何ブロックまで跳べるのか確実に予測することができました。
あのステージそのまま(写真一番上)18年後の姿!今週リリースされた最新リメイクは、さすがに色々親切に
こういったデザインについて80年代の当時、僕らは非常にしっかりとやっていたので、例え何度も何度もプレイヤーが死んでしまったとしても、それは自分のミスであり卑怯なやり方で殺されたとは感じません。
現在の3Dゲームと浮動小数点座標の世界では、崖っぷちにどれだけキャラクターが近づいているのかとか、その瞬間に主人公は今大丈夫なのかといったことに対してしばしば、ずっと曖昧な判定になっているのです。
私にしてみれば、今のゲームでむしろ難しく感じるのは、覚えなければならない多くの操作です。4つのボタンと十字キーに、2本のアナログスティックにトリガーがあって、おまけに特別な組み合わせやこれの順押し同時押し……うわぁ。今の水準からして、実際のところPrice of Perisiaの操作はとても簡単でした。
IGN: 3Dプラットフォーマー(※足場モノ。ジャンプ系アクションの海外で一般的な呼称)の欠点は何でしょう。横スクロールの利点、今の業界に、2Dプラットフォーミングが生き残る場所はあるでしょうか?
Mechner: 3Dの大きな長所は、とても映画的であり、そして――それが上手く行ったときには――自分が本当に世界へ入り込んだ感じがすることです。
その不利なところは、画面とコントローラーは2Dのままですから、この二つが自然に対応しないところです。プレイヤーをイライラさせたり、その方向感覚を失わせたりすることなく、ビジュアル的に美しい3Dのポテンシャルを活かしたカメラを用意することは、本当に難しいのです。
キーボード由来のその計算できるジャンプアクションは、海外を中心に受け継がれ、3Dになってさえ影響を与え続けました
これと対照的に、2D横スクロールのカメラはキャラクターのアクションから距離を置こうとするので、作り物っぽく見えてしまい動きに乏しい感じです。ちょうど、カメラを三脚に固定して動かすことのない、録画されたお芝居みたいです。
でも、その2D画面と2Dの操作であればこそ、この二つがそのまま互いに一致し、最終的にはプレイヤーとゲームシステムの間により密度の高い関係を生み出す、ぴたりと正確な操作が可能になるのです。
3Dとか2Dとかいう呼び方自体、少々当てになりません。そのゲームプレーは、ほとんど重力で地面に縛られているのだから、大半の3Dプラットフォーマーは本質的に2Dです。実際のところKaratekaは、1Dでした、上にも下にも行けませんし。でも、自分のベストゲームの一つだと思います。
IGN: 最後に、新しくなったPrince of Persiaを見て、御自身でまた横スクロールの新作を作る気はありませんか?
Mechner: 何かまた、自分が横スクロールアクションをやれるかもしれません。それについて話すにはまだちょっと早過ぎますが、2008年になったらもう一回僕に聞いてください!
いずれ彼が、ゲームファンを再び驚かせてくれる日も…
日本ではオリジナルのPCゲームに直接触れる機会が少なく、未だ80年代90年代の海外ゲームは誤解されている面も多々ありますが、これまで彼の名前を一度も耳にしたことがなかった方でも、日本で根強い人気をもつ2Dゲームのファンにとって、納得できる部分も多かったのではないでしょうか。
近年はあまりゲームの世界で表舞台に立つことのなかったMechner氏ですが、Ubisoftが復活させたThe Sands of Time(趣きの変わってしまった、2作目以降のシリーズはノータッチの模様)の時にシナリオやゲームデザインを監修し、現在はドキュメンタリーフィルムを撮ったりそちらの脚本を書いたりといったお仕事もされているそうです。
(ソース: IGN: “Jordan Mechner: The Original Prince of Persia”) (イメージ: Gry Online)
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