あのポスタル・デュードが今こそ吼える!『Postal』Vince Desiのデザイン論
今週、ESRBやBBFCなど各国のレーティング機関から連日のようにダメ出しを貰い、とうとう発売を一時見合わせることになってしまったRockstar GamesのManhunt 2。内容を修正しようにも、あちらで色々著名なアナリスト氏の見立てでは、これから100万ドルはかかりそうだとかでかなりのピンチ。
そんな折も折、突如立ち上がったのはブラックユーモア溢れる残酷ゲームの大先輩Running With Scissors。ここしばらく大人しかったと思ったら、あのPostalが映画化されちゃったり、来年に向けて3作目を準備中の同社トップ、Vince Desi(ヴィンス・デシ)氏がGameSpotのインタビューに答え、タイムリーな内容が話題となっています。
今週はそのやり取りの一部より、安易なバイオレンスという括りを突き抜けたPostal以来の10年間、常にビデオゲームの境界から世界を挑発し続けてきた彼らのビジョンをご紹介。
怪しすぎるアイテムもそのままに、これがホントのリアルPostal Dude。映画の方も無事公開できますやら…
GS: これまでRunning With Scissorsは、ESRBから成人指定の評価を受けたことありますか?
Vince Desi: いいえ。Postalのゲームは全部、M(Mature、17歳以上推奨)と評価されました。
GS: では、あなた方より先にAO(Adult Only、18歳未満購入禁止)となったRockstarを、ちょっと羨ましいなんて思ったりすることは?
Vince Desi: 自分達はユーモアにのっとったゲームを作ります。暴力がその中心にあるのではなく。1番乗りに関しては、Postal 2はESRBから6つもマークを付けられました。ほら僕らが最初だった、「激しい暴力」とかね。まじめな話、どんなデベロッパーもわざと悪い評価をもらおうとするとは思えません。
GS: 当時Postalの過激な内容を巡る論争は、結果的にシリーズの売り上げを伸ばしましたか?それとも失いましたか?
Vince Desi: 僕らにとって今年は、10周年の記念すべき年です。Postal 3をPCとMac、Xbox 360用に作っていますし、9月には劇場映画が完成します。ですから、昔を振り返ってみれば上手くやってきたでしょう。とはいえ、ここアメリカで最初は有害物扱い、まともに流通させることすら出来ませんでしたよ。
国によっては所持しているだけで違法になったらしい、初代Postal。今思うと色々凄い国内版独自のアキバステージ
GS: 今回のManhunt 2がもしあなたの会社の製品だとしたら、そのレーティングは同じ結果になっていたと思いますか?
Vince Desi: そんなことわかりません。全てのゲームが、その内容だけで評価されると自分は信じたいです。少なくともそうであるべきです。
GS: ではManhunt 2が、もしPC専用のゲームだったらどうなっていたでしょう?
Vince Desi: 同じことです、理想的にはそうあるべきです。とは言うものの、もし違った時期に違った人が評価するのであれば、果たしてそれで同じレーティングになるものか疑問もあります。
「冗談は顔だけにしろよ?」…よりによって本物が出演して過激なネタにされる、哀れな元アーノルド坊や
GS: こうしたレーティングは、不適当なゲームから子供達を守るのに実際何か役立っているでしょうか?
Vince Desi: 例えば、初めてタバコを吸ったのはいくつの時でしたか?最初にビールを飲んだのは?自分も今のレーティングシステムが、一般的にはその価値ある情報という奴をお客さんへ提供するのに役立っているとは思います。しかし、その評価機関がゲームの監視手段みたいになっちゃ絶対いけないんです。
GS: 来年Postal 3が完成したら成人指定にされてしまい、あなたもXbox 360版のMicrosoftと問題になる可能性を考えたりはしますか?
Vince Desi: とんでもない。我々のデザイン方針は本当にとてもシンプルなものです。新しいゲームの中身について考える時、僕らは自分自身に問いかけます。
―「それって、遊んで楽しい?」、その次には「それって、可笑しい?」
暴力の類について考えることはまったくありません。それは、ゲームの楽しみを平面的な、一方通行のものに閉じ込めてしまいます。またの名を、ウンザリってね。
僕らは(ブラックに見えても)笑わせるためにゲームを作ってるんです。面白半分に遊べたら、それでますます楽しませてくれるような。その時、お腹の底からみんな、笑い飛ばせてしまうような。
「脳が溶けるぞー!、そんなゲームいらなーい!」今日も今日とて同社に押し寄せる、抗議団体の運命や如何に…
いまどきの単に過激なだけのバイオレンスを先取りしたというよりも、むしろそれを封じ込めようとする社会に対する挑発を、これでもかとばかりに詰め込んでみせた、なんともアナーキーなゲームデザインの極北Postal。その溢れんばかりのパンク精神は、同社の公式サイトを見れば今でも一目瞭然、唯一無二。これは、まだまだRockstarなんてヒヨッコかも。
なにか別のページに飛ばされた気がしますが、れっきとしたゲーム会社の公式サイト。映画の予告編も公開中
Rockstar Gamesがここまでメジャーになるより先、実際にいつもメインストリームのメディアから槍玉に挙げられてしまう、危ないブランドの代名詞だったRunning With Scissors。実は10年前、最初のPostalを発売する前身のデベロッパー時代は、なんとスーパーファミコン(SNES)向けにトムとジェリーやらセサミストリートといった、子供向けタイトルばかり開発していたそうです。
そんな仕事に、いつか飽き飽きしてしまった彼らは、はじけとんだ公式サイトに負けない毒の強すぎる自己紹介でこう宣言します。
(ソース: GameSpot: “Q&A: Postal designer on Manhunt 2″) (イメージ: NoFrag)We believe that violence belongs in entertainment products - not in the streets.
私達は、暴力がエンターテインメントの方に相応しいと信じています。
―ストリートの雑踏ではなく。
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