絶好調な任天堂の変わらないその哲学…手塚卓志氏海外インタビュー
世界中で快進撃を続けるDSとWiiの大ブームで、先日はとうとう会社の時価総額が国内企業のベスト10にまで入るようになったという、我らが日本の任天堂。マリオシリーズを中心に宮本氏と共に任天堂の開発を一線で支えてきた情報開発本部の手塚卓志(たかし)氏が、Next-Gen.bizのインタビューに答えました。今週は久々に、国内の現場に立つ開発者の方から、話題の海外インタビューをご紹介。
Next-Gen.biz: 初めに、ただいまの任天堂内部の様子はいかがでしょう。ファミコン(NES)が大成功した20年前と比較したらどうお感じですか?
Takashi Tezuka: ゲームを作るときに、私は時代の流れをいつも意識してきました。私たち、開発スタッフのメンバーはいつも、エンターテインメントの新しい波を示すようなものを作ろうと心がけているんです。この想いは、この20年来変わることがありません。
ビデオゲーム産業全体が成長するにつれ、ゲームを作るのに必要な人数も大幅に増えることになりました。現在の私たち(任天堂)は、さまざまなジャンルのソフトをできるだけ効率良く扱うことが必要とされています。具体的に言うとソフトを作るやり方が変わり、ほとんどの場合一部の人がプロジェクト全体に関わるのではなく、作業全体を特定の面から専門にする人たちを用意するようになりました。
宮本プロデュース手塚ディレクター体制での記念すべきデビュー作となった、スーパーマリオブラザーズ3
Next-Gen.biz: WiiやDSと共に、任天堂がそのルーツへ戻ってきているとはお感じですか?
Takashi Tezuka: 実際、任天堂がゲームのルーツから逸れたことがあるとは思いません。表現の仕方は変わりました。しかし、私たちがお届けしようとしているエンターテインメントの本質は、そう変わっていないのではないでしょうか。
もちろん、それぞれ住んでいる国や地域、時代によっても興味は変化します。私たちは常々、良い意味でなにか驚かせるものを作ろうとしていますが、しかし、一体どうやったら驚かすことができるかというのも、それに応じて変わっていくのです。(だからこそ)私たちは時代の流れに細心の注意を払うよう、日ごろから心がけています。変化していないことといえば、私たちがいつも人を驚かすことが出来るような、常に新鮮なエンターテインメントを追求しているということなのです。
Next-Gen.biz: 20年前と比べて、ゲームデザインのやり方はどうでしょう。同じ一般層へ訴えかけるのに、意識して当時と同じように考えるのですか、それともその手法は大きく変化しましたか?
Takashi Tezuka: 自分がゲームを考えるやり方を、これまで大きく変えたことはありません。実際のところ、私がゲームをデザインする時に、カジュアルユーザーとハードコアゲーマーだとか意識してわけて考えたことがないんです。これまで20年間にわたって、誰もが楽しめるものを、できるだけ多くの人たちが楽しめるゲームを、いつも作ろうとしてきました。
その多くがお蔵入りを余儀なくされたものの、実は今につながる礎となった64DD。当時ここで様々な実験を行われたそう
Next-Gen.biz: では、GameCube時代とくらべて実際の開発過程はどう変化したのでしょうか。大人数のチームが、もっと手の込んだ大きなプロジェクトにあたるような時には?
Takashi Tezuka: ソフトによって、スタッフの総人数はGameCubeで必要になった数より少ないこともあれば、Wiiの方が多いこともあります。もちろん開発のノウハウは蓄積されているので、関わった人数が少ない時でさえ全体の作業量は大きくなっているかもしれません。
こうした自分の答えでは、少々ご期待に添えないのではないかと思います。でも、私たちはスムーズなコミュニケーションや開発ツールを含めた能率的な仕事環境を重要視していて、こうした地道な努力が常に成果を上げているのです。
Next-Gen.biz: 最後に、DSやWiiが大成功を収めている今、そのことには大きなプレッシャーをお感じになりますか?
Takashi Tezuka: 本当に、プレッシャーはいつも同じだけ感じているんです。以前は、DSとWiiの立ち上げを無事成功させ、勢いづかせなくてはならないことがプレッシャーでした。そして今は、これを持続し拡大させなくてはならないプレッシャーがのしかかります。でもそれでもやはりね、私はゲームを作る自分の仕事が心から好きなんです。
完成が待ち遠しいマリオ最新作。現在はEAD(情開)製作部長としてより高い位置から、全体を監修されているみたい
英訳された文章からも、大変真面目な感じのお人柄が伝わってくるような今回のインタビュー。いつもの海外メディアからのおいしい質問もことごとくあっさりと躱されてしまいましたが、その発言には今も昔も本当にあきれるほどブレがありません。
長く開発現場の一線に立たれている方と、会社全体のスタンスがここまで一致していることこそ、まさに任天堂を支えてきたユニークな強みといえるかもしれませんね。
いつかまた、ディレクターとして深く関わられた作品も、ゲームファンとしてはプレイしてみたいところです。
(ソース: Next-Gen.biz: “INTERVIEW: Takashi Tezuka” バイオロジー: N-Sider, Wikipedia)
(イメージ: Flickr)
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