パンクは死なず!『No More Heroes』須田剛一氏海外ロングインタビュー
登場時には毎回激しい賛否両論を巻き起こしながら、一目でそれとわかる独特な世界観のアドベンチャーゲームで初代PlayStation時代から熱心なファンを獲得。世界で話題となったKiller7以降は、今や日本を代表する個性派ゲームデザイナーの一人となった、Suda51ことグラスホッパーマニファクチュアの須田剛一氏。
Wiiに舞台を移してまたも過激な須田節が炸裂する、注目のNo More Heroes(ノーモアヒーローズ)も、いよいよ完成度が上がってきたみたい。今回はGamasutraよる、話題の海外インタビューからその一部をご紹介。
プレイヤーを選ぶその作風は、ヒューマン時代から健在。GHMのデビュー作、シルバー事件もDSでリメイク予定
Gamasutra: 現在多くのプロジェクトを手掛けてらっしゃいますが、ここ数年でグラスホッパーマニファクチュアはかなり大きくなりましたか?
Suda: スタッフを増やしたのは10人ぐらいかな。まぁ、その程度なんです(笑い)。
Gamasutra: 全体では、現在何名ぐらいのスタッフが?
Suda: 今だと、だいたい50人かそこらですね。
Gamasutra: No More Heroesのインスピレーションは、どんなところから影響を受けましたか?
Suda: アレハンドロ・ホドロフスキーのエル・トポ(70年代のレイトショーで一世を風靡したカルト映画の金字塔)に一番強くインスパイアされています。(異常な)決闘の連続で物語が展開していくような、いつもあんなゲームを作ってみたかったんです。No More Heroesでは殺し屋も出てきます。殺し屋が果し合いをして、その相手を一人ずつ"ライトセーバー"で倒していく。そんなゲームを目指して考えました。
Gamasutra: なぜ、ゲーム中の言語に英語を選ばれたのでしょうか?
Suda: ええ、(当時カプコンの)三上真司さんとやったKiller7でも、これまでより海外向けに作ったのですが、結果として多くの注目を浴びることになりました。なので、もう少しあの路線で展開するのを続けてみたくて。しかし、なによりもまず僕達グラスホッパーのスタイルは、日本の市場より海外に向いていると感じてたんです。
強い影響を受けたというAmigaのAnother World(アウターワールド)。当時最高にカッコ良かった早過ぎるポリゴン劇
Gamasutra: 以前も少し触れてらっしゃいましたが、グラスホッパーにとって海外の市場はどれだけ重要なものなのですか?
Suda: 自分にとって、日本のファンも共に大変重要なものです。ただ、いつかはグラスホッパーの名前をもっと大きく飛躍させたくて、その為には日本市場だけにフォーカスしていては不十分です。正確なパーセンテージはお伝えできませんが、海外の市場は極めて重要になっています。
Gamasutra: ことによっては非常に日本的なゲームでさえ、大神のように日本よりアメリカの方がうまく受け入れられているようです。日本のプレイヤーに日本的な美意識のゲームが受け入れられないのは何故なのでしょうか?
Suda: はっきりしていることは、日本とアメリカのプレイヤーが求めるゲームが完全に変わってきているということです。例えば、その大神。旧クローバースタジオのメンバーは、以前から海外で成功したタイトルを多く出してきたので、彼らは海外市場にアピールしたゲームを作る方法を当然のように心得ていました。
もう一方の要素は、欧米のユーザーは新しいゲームをもっと積極的に受け入れます。彼らは変化を歓迎します。日本人は比較的嗜好が狭くて、日本の市場は新しいゲームに対して拒否反応を示します。これが主な理由でしょう。
ビームカタナで、バッサバサ。発売日は依然として年内未定のNo More Heroes。これからE3の続報に期待!
Gamasutra: 随分前に、どうやってGTAのようなオープンワールドのゲームを作りたいかについてお話しましたが、実際グラスホッパー流にこういったゲームを手掛けるのに最も重要な要素は何ですか?
Suda: 予算、予算……そしてスケジュール。あとは、大手のパブリッシャーと組む必要があるでしょう。
Gamasutra: そういうオープンワールドのゲームでストーリーが重要になれると思いますか?ゲームが始まって5分もしたら、みんなやりたいようにやって物語はそっちのけです。
Suda: 自由度がただ高くなると、最終的にはその自由であることに飽きてしまうようになります。ゴールの存在を見失ってしまうような。しかし人生には目的があって、物語があるのは当たり前で、そんな風になんらかの筋書きがなくては、プレイヤーも作られた世界での存在理由がだんだんわからなくなってしまいます。これはちょっと、現実に近い話だと思います。
Gamasutra: ストーリーの範疇で多くの因果関係を備えたシナリオを構築することは大変に難しいことです。プレイヤーにとって有意義なやり方で複数の展開に意味のあるようなことは可能でしょうか?
Suda: うーん。自分は、それぞれに多くの結末を持たせる必要はないと考えます。人生で結果は一つしかないのに似て、エンディングへのルートをプレイヤーに辿らせるだけの価値こそが必要なのです。ゲームのバリエーションのために、最終的な結末を書き換えられるようなものにはしたくありません。
そう考えるのは、誰しも皆ベストな人生を送りたいと思うからです。たくさんのバリエーションがあったところで、もし結果に不満足ならプレイヤーはリセットしてしまうかもしれません。ことによっては、それでそのままゲームをやめてしまいさえします。誰しも完璧なエンディングを望んでいるのです、それが良いことではないのですが……。
毎回個性的なアドベンチャーゲームを送り出してきた強烈な作家性と、ビデオゲームの特有の自由度やインタラクションのせめぎ合いという部分でもなかなか興味深い今回のインタビュー。
次回のNo More Heroesでは、これまでのグラスホッパーテイストを保ちながら、Wiiリモコンのチャンバラはもちろん、国内のゲームではまだまだ珍しい(小さいながらも)密度の高いユニークな箱庭スタイルを実現するみたい。以前の作品に比べるとゲームの間口はぐっと広がり、これはまた新たな一面を世界に披露してくれそうです。
(ソース: Gamasutra: “Die Without Regret: An Interview With Goichi Suda”) (イメージ: GamesMail)
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