ゲームデザインの偉大な革新 BEST 50 〜ゲームはこうして進化してきた〜
世界初の商用テレビゲームは『コンピューター・スペース』(1971)とされています(※1)。そこから考えても約35年。これはひとつの文化の歴史としてはとても短いものです。この短い時間の中で、テレビゲーム(ビデオゲーム)は長足の進歩を遂げてきました。Next-Gen.bizでは、”50 GREATEST GAME DESIGN INNOVATIONS“と題し、これまでにゲームがどのような革新によってここまでの進化を遂げたかを、50の項目にわけて紹介しています。今では当たり前のことの積み重ねでゲームはここまで来ました!
【ゲームプレイにおける革新】
1. 探査
2. 物語
3. ステルス
4. アバター(※人間に類するゲームキャラクター)
5. リーダーシップ
6. 外交
7. MODサポート
8. NPCの進化
9. 対話
10. 複数のステージ
11. ミニゲーム
12. 複数の難易度
13. 時間の遡行
14. 複数のアバター(※ソニック&テイルズ、バンジョー&カズーイなど)
15. サンドボックスモード(自由度の高いノンリニアなゲームモード)
16. 物理演算を基にしたパズル
17. インタラクティブドラマ
初期のゲームはひとつの画面でなんらかのシミュレーションを行うものに過ぎませんでした。それが複数の画面を行き来できるようになると、最初の画面と次の画面の違いがゲーム性になる「探査」が発生します。よりグラフィックが進化すると「複数のステージ」でのゲームプレイが可能に。
ただのオブジェクトでしかなかったプレイヤーが、ゲームキャラクターとなる「アバター」を獲得するとそこには「物語」が生まれます。主人公を複数から選択できる「複数のアバター」も後にはスタンダードに。プレイヤーが動かすモノに人格が与えられることで、ゲームは大きく進化。より人間らしさを獲得しそこには現実にありうるような「外交」や「リーダーシップ」「対話」が生まれます。
こうしたプレイヤーの進化に対応するため「NPCの進化」が必要となり、ゲーム自体もおおがかりなものに。本来ゲームだったものが相対的に「ミニゲーム」となっていきます。上記のこれらを全て内包した「サンドボックスモード」はGTAの登場で広く知られることとなりました。
【操作における革新】
18. 「動く」と「狙う」の独立
19. ポインティング&クリック
20. FPSのためのマウスとキーボードによる操作
21. 音声認識
22. 音楽ゲームのための特別なデバイス
23. 動きのインターフェイス(モーションセンサー)
24. 再構成可能でアクセスしやすいコントロール
マウスから始まったポインティング&クリックはアドベンチャーゲームのスタンダードに
インベーダーゲームで知られる初期のシューティングゲームは、プレイヤーが動いた場所から上に向かって真っ直ぐ発射することしかできませんでした。今でもそのゲーム性はシューティングゲームの本流として残っています。その一方で「動くことと狙うことが独立」することでゲームの見た目は大きく変化。
アドベンチャーのジャンルではマウスによる「ポインティング&クリック」によって調査が可能に。今でもアドベンチャーゲームには欠かせない操作方法です。
FPSがこれほどまでに普及したのは、デバイスとのマッチングかもしれません。「狙うと動く」を「マウスとキーボード」に置き換えるこの操作はFPSの基本。ジョイパッド式のコントローラーは今でもこの操作に追いついていません。
その他、デバイスの革新がジャンルにも大きな影響を与えています。DDR、Guitar Heroなど「音楽ゲームのための特別なデバイス」は汎用のコントローラーでは味わえない音楽に合わせて入力する喜びを実現。「音声認識」や「モーションセンサー」もゲームそれ自体を変える可能性を見せ始めています。
「再構成可能でアクセスしやすいコントロール」 ―今では当たり前のようになっていますが、一種類のコントローラーで何百種類ものゲームが出来るのはすごいことです。コントローラーが存在することで、そのデバイスにあった操作が生まれ、ジャンルごとに次第に統一されていきます。このことが、いわゆるコンシューマー機の普及に貢献したことは間違いありません。最近ではFPSの射撃ボタンや、レースゲームでのアクセル&ブレーキといった細かい部分も統一される傾向にあります。
【見た目における革新】
25. スリークォーター視点
26. ファーストパーソン視点
27. サードパーソン視点
28. カットシーン
29. 3D
30. カメラワークによる演出
31. 地形の自動生成システム
32. 交換可能なダイアローグ再生(スティッチング)
33. 音楽の適応
34. バレットタイム
35. 変形可能な環境
36. インジケーター、HUD、アイコン
擬似3Dを実現したスリークォーター視点。高さの概念の導入でゲームはより複雑に
ゲームにおける最重要項目ともいえる視点。ただの見下ろし型視点だったものが「スリークォーター」「ファーストパーソン」「サードパーソン」といった視点に分化していきます。それぞれのジャンルにあった視点が導入されることで、遊び易さや臨場感は増加。
ゲームはよりドラマチックに。ただ動かして楽しいものから、感動や興奮を味わうスケールを獲得したゲームには、「カットシーン」や「カメラワークによる演出」が加わり見た目がより映画らしくなっていきます。それにあわせて音響面でも進化。それぞれの場面にあった「音楽の適応」が求められ、場面ごとに違った音楽を流すことによってドラマはさらに盛り上がりを見せます。
ゲームが映画らしくなっていく一方でも、ゲームとして遊び易く楽しいものでなければ意味がありません。リアリズムの追求や演出上の不要性から、「インジケーター、HUD、アイコン」はしばしば議論となります。弾が何発あるか、体力はどのくらい残っているか、どのような状態変化なのか、敵がどこにいるのか、などなど、映画らしいゲームで、最もゲームらしい部分はこの画面上の情報かもしれません。映画らしさを確保しながらもインタラクションを強化した「変形可能な環境」。オブジェクトの破壊、は最近のトレンドでもあります。
スポーツゲームにおいては、リアリズムの観点から音声実況が必要とされ、「スティッチング」が導入されます。選手の名前を適切なタイミングで呼んでくれる、アクションに対して適切な状況説明をしてくれる、など。
【ジャンルにおける革新】
37. 建設&経営シミュレーション
38. リアルタイムストラテジー
39. 格闘
40. 音楽&リズムアクション
41. 人工ペット&人間
42. 「神」のゲーム(※ポピュラスに代表される神の業を実行できるゲーム)
43. 恋愛シミュレーション
44. インタラクティブムービー
45. 女の子のためのゲーム
ゲーム上に自由につくられる人間たち。ときには人間以上に人間らしさをみせてくれます
日本で独自に育ってきたジャンル、「恋愛シミュレーション」(原文では"Social and dating games (with or without sex)"というタイトル)が海外サイトでとりあげられることは非常に注目に値します。ここでは本文をそのまま引用してみましょう。どういった紹介の仕方をされているでしょうか。
非電源系ゲームにおいては、Milton Bradleyによる1965年のボードゲーム、Mystery Dateで唯一、デートするゲームを見つけることができました。コンピューターのデートシムは日本においてメジャーな現象です。多くはダイアローグツリーによる会話です。将来のパートナーとより親しい関係になるためには、「正しいこと」を言う必要があります。いくつかにはRPGと変わらない複雑で特有のシステムがあります。しかし、その特有性は怪物を倒すためよりもむしろ、キャラクターのロマンティックアピールを記述するためにあります。このジャンルにおける最初の例:同級生(Classmates)1992
全体を見てみると、経営、音楽、恋愛、育成などシミュレーションゲームが目立ちます。現実世界の全てがシミュレートできる“仮想世界”。ひとつの箱庭ゲームにこれらのシムが全て入っているような、そんなゲームがリリースされる日も遠くありません。既にSims(シムズ)はその領域に入りつつある気もします。
【プレイスタイルにおける革新】
46. リーダーボード
47. セーブ機能
48. ネットワーク
49. マルチプレイヤーダンジョン
50. パーティーゲーム
これがAtari ジャガーだ!(本文とは関係ありません)
初期のゲームには「リーダーボード」がなかったそうです。誰かとスコアを競い合うことでゲームはビデオゲームというより“ゲーム”として進化してきました。今ではオンライン上でハイスコアを競うことも当たり前に。そしてそれを実現し、世界中のプレイヤーと腕を競うことを可能にしたのが「ネットワーク」でした。
ゲームがこれほどまでに普及し、自宅で長時間プレイできるようになったのも「セーブ機能」のおかげです。“電源消したら全てリセットの時代→長大なパスワードをメモ、パスワードがちがいます(絶望の淵へ)の時代→オートセーブの時代”まで今は来ました。RPGだけではなく、どんなジャンルのゲームにおいても革新を導いたセーブ機能。電源を消したらレベル1に戻ったり、街がリセットされたり、記録したハイスコアが無くなっていたりしたら、これほどまでにゲームに夢中になることはなく、これほどまでにゲームが巨大なものになることもなかったはず。
この記事はNext-Gen.bizで掲載された50 GREATEST GAME DESIGN INNOVATIONSをもとに作成しました。興味がある方は是非情報元を参照してみて下さい。
UPDATE: 読者のTさんより情報をいただき、記事(31. 地形の自動生成システム)を一部修正しました。Tさんありがとうございます!
(ソース: Next-Gen) (イメージ: Flickr, Obligement, 「さんまの名探偵」攻略)(※1: 『テレビゲーム文化論』桝山寛著 講談社現代新書より)
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