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政府(厚労省他)


「実態」表わす医師需給データ作成へ―ビジョン検討会

 厚生労働省は、今後の医師の需給見通しについて、女性医師の労働力を男性医師の0.5と換算するなど、新たな要因を加えて推計し直すことを決めた。8月23日の「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会(座長=高久史麿・自治医科大学長)で厚労省が示した需給推計に「現場の実態から乖離(かいり)した荒唐無稽なデータ」などの批判が委員から上がったため、舛添要一厚労相が、「この検討会のアウトプットとしてこのデータづくりをやってみては。実態に一番近いデータをつくるだけで意味がある」と述べていた。

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 厚労省がこれまで示してきた医師の需給に関するデータは、2006年度にまとまった「医師の需給に関する検討会報告書」によるものだ。ここでの需給試算は、同年度の厚生労働科学研究費補助金で実施された「日本の医師需給の実証的調査研究(主任研究者=長谷川敏彦)」に基づいており、いわゆる「長谷川データ」と呼ばれている。ただ、このデータに対しては、医師の労働時間が会議や教育の時間なども含めて週48時間で計算されていることや、医師の年齢が考えられていないことなどに対し、現場の実態に合っていないとする指摘が上がっていた。同検討会の初会合でも同じデータが示されたため、「実際には週40時間の残業などザラ。実態を無視していては予測にならない」(土屋了介委員=国立がんセンター中央病院長)「年々女性が増えているので、タイムスタディをやっていかないと分からない」(嘉山孝正委員=山形大学医学部長)など、現場に即したデータでの試算を求める意見が出ていた。

 23日に示した推計は、初会合と同じ「長谷川データ」によるもの。医師の需要に関しては、医師の週当たり労働時間(当直時間を含む)を、「48時間」「44時間」「40時間」の3パターンで示した。供給に関しては、「定員を過去最大」「定員2割増」「10年で4000人増」「定員増なし」の4パターン(図)。厚労省の担当者は、パターンごとの需給が重なる年度を示した上で、「どれをとっても向こう10年程度は医師数の大幅な増にはならない。女性医師の就業率改善やスキルミックスなどによる対策が必要。地域、診療科偏在などへの対策が不可欠」と述べた。



 この需給試算について、委員らは以下のように意見した。

岡井崇委員(昭和大医学部産婦人科学教室主任教授) 労働時間だけで変化を見ているが、ほかにも影響を与える因子はある。医師は長時間労働になっているため、診療時間を短くせざるを得ない状況。3時間待って3分診療という状態を変えるだけでも(需要は)違う。また、女性医師は育児や出産などがあるので、いいとか悪いとかではなく、男性1に対して、女性0.5で計算しないと厳しい

嘉山委員 医師の労働時間はもっと長く、週70-80時間は働いている。48時間労働なら医師が逃げ出すわけがない。女性の働き方は今後変わっていくと考えられるので、需給の完全な予測は不可能。何年かごとに見直してほしい

川越厚委員(ホームケアクリニック川越院長) このデータを見ると、今後医師が余って困るように見える。医師の労働は過剰なところには偏りがあり、例えば産科は当直すると24時間拘束される。どの診療科でどういう人がどう仕事をするかのメリハリをつけることが重要では。医療の質にまで踏み込む話だが、ここまでやらなければ『医師の数は増えたが現場がやらない』と言われてしまう。

吉村博邦委員(社団法人地域医療振興協会顧問) 医師不足は産科や救急、外科が厳しい。あまねく増やすのではなく、厳しいところを増やせるシステムにしなければならない。偏在の問題では、臨床研修制度にも大きな問題点がある。マッチングの見通しでも、昨年度は募集が約1万2000件に対して、学生の応募は約9000人と、3000人が余った。人気のある病院に学生が集中するので、一定期間を地域でやるような仕組みが必要。また、医師の過剰勤務を解消するには、メディカルクラークやトリアージナースなどが重要で、助産師や看護師による医療行為の緩和も必要。専門医が診療するなら報酬を10−20%上げるなどの加算も必要では。救急や分娩に補助を与え、それが個人の医師に還元されるようなシステムが必要。

海野信也委員(北里大産科婦人科教授) あまりに荒唐無稽なデータで、(現在より)2万人増えたら週48時間労働が達成できるように見える。病院は、高次医療や救急医療に携わる医師が苦しいから、そこに数を増やすようにやっていかなければ。この試算自体は間違っていないが、高齢の医師が増えていくと急性期や救急に対応できなくなる

土屋委員 国立がんセンターでは、常勤医140人に対し、非常勤医が130人。「長谷川データ」は常勤医の勤務時間を用いているが、実際の現場はこうした非常勤医も担っているため、現場の実態を表していない。

■パラメーターを変えて「実態」データを
 こうした議論の後、厚労相が次のように取りまとめ、厚労省の外口崇医政局長に検討するよう指示した。
「現実に(制度を)動かすことを考えた時、いつもデータ構築で仕事が半分ぐらい終わってしまう。パラメーターを変えていけばいいので、長谷川モデルを一つの参考とすれば、女性を(男性の労働力を1として)0.5に換算するとか、診療時間を例えば6分間にすることもできる。レジデントの人数なども加えられる。この検討会のアウトプットとして今言ったデータづくりをやってみたらどうか。いくつか組み合わせて、実態はこれが一番近いというデータをつくるだけでアウトプットとして相当意味がある」

 これを受け、検討会の委員は24日、医師の需給推計について、「さまざまなパラメーターを含めて、厚生労働省が推計を行う」とする骨子(案)を提示した。パラメーターとしては、▽自己研修、研究、休憩時間等を含めた滞在時間を用いる▽病院滞在以外にも拘束されるオンコールの時間を含める▽女性医師の労働時間を男性の0.5とする▽非常勤医の勤務時間も含める▽3分診療を6分にする▽高齢者には急性期医療は務まらない▽臨床研修制度によって2年間医師が消えたような状態にある―などを挙げた。


更新:2008/08/25 17:56   キャリアブレイン


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