社 説

健保組合解散/やはり抜本的見直しが要る

 4月に実施された高齢者医療制度改革の「ひずみ」が、あらわになってきている。大企業の従業員らが加入する健康保険組合で相次ぐ解散が、それだ。本年度は既に前年度と同じ12組合に上る。解散せざるを得なかったのは、制度改革で高齢者医療を支える負担金が大幅に増えたのが一因だ。

 財政再建に向け公費負担の削減を目指す政府が、各医療保険制度間の格差是正を図る「財政調整」の名のもと、負担を健保組合に押し付けた結果だ。それは、財政調整という小細工では立ちゆかなくなりつつある現行医療保険制度の限界をも示す。

 医療を含む社会保障制度の抜本改革がどうしても必要だ。
 8月1日付で解散した物流大手、西濃運輸(岐阜県)を中核とするグループ各社の健保組合。負担金は前年度より約22億円、6割以上も増えた。それを補うには保険料率を現行の8.1%から10%超へ引き上げる必要があり、それに耐えられないと判断したからだ。

 解散後、加入者が移行したのは国が運営し中小企業の従業員らが加入する政府管掌健康保険だ。保険料率は8.2%。負担増はわずかで済む。無理して健保を維持する意味もない。そんな切羽詰まった選択を強いたのが4月の医療制度改革だ。

 関心が集まったのは75歳以上が対象の後期高齢者医療制度で、保険料の負担増や天引きが批判の的となった。が、同時に、65―74歳が対象の前期高齢者医療制度も整えられ、両制度に健保組合などが拠出する負担金制度も導入された。

 旧老人保健制度でも75歳以上に対する負担はあった。だが、大幅に増えたのは前期高齢者に対する負担だ。従来は退職者に限られていた支援対象が、高齢者率が高い国民健康保険の加入者らにも広がったためだ。

 この制度改革で、高齢者だけでなく、働く現役世代の負担もぐっと増したのだ。
 少子高齢化が進む中、現役世代が一定の高齢者医療費を負担するのはやむを得ないとしても、健保組合が解散するというのはどうも腑(ふ)に落ちない。高齢者医療に公費負担を増やせば避けられた事態だろう。政府にとって、その代償は軽くない。

 健康保険組合連合会は本年度、負担増から全国約1500の組合のうち9割が赤字になるとみる。医療制度改革の狙いの一つに、政管健保への公費負担(年間約8300億円)の削減もある。解散し政管健保に移行する西濃健保のような例が今後も相次げば、逆に公費負担が膨らむという結果を招きかねない。

 健保組合解散というほころびが、現行保健医療制度の破たんにつながりはしないか。公費を含め、医療保険の負担の在り方が厳しく問われている。
2008年08月25日月曜日