◎北京五輪閉幕 平和の祭典に差した「影」
北京五輪が十七日間の熱戦の幕を閉じた。未来に語り継ぐ価値のある名勝負、名シーン
が目に浮かぶ。女子ソフトの坂井寛子選手が石川県出身選手として初めて金メダルを手にするなど、地元勢の活躍も目立った。日本は、目標としていた「金メダル二けた、メダル総数三十個」には届かなかったが、まずまずの成績だったといえるのではないか。
華やかな平和の祭典は、目覚ましい発展を遂げる中国の国威発揚の場でもあった。壮大
なスケールの五輪会場、開会式、閉会式セレモニーの演出の豪華さ、米国を圧倒した金メダル獲得数など、「昇竜」の勢いを世界に見せつけた。北京五輪が、オリンピックの歴史に偉大な一ページを刻んだのは疑いないだろう。
ただ、まばゆい五輪の舞台には、目をそむけたくなるような「影」も差した。開幕前か
ら少数民族ウイグル独立派のテロが続発し、聖火リレーでのチベット弾圧抗議デモは、中国が抱える少数民族問題の根深さを印象付けた。開会式での「口パク少女」や「CG合成の花火」「漢民族の子どもが演じた少数民族」などは、欧米メディアの中国異質論を勢い付かせるに十分だった。競技会場でもチケットが完売のはずなのに、空席が異常に多かったり、一部競技では日本選手へのブーイングもあった。
中国が五輪の成功を誇り、自信を深めるのは良いことだが、国際社会の目は、こうした
部分にも向けられている。問題点をしっかりと受け止め、改善してほしい。日本をはじめ、西側諸国は中国に辛抱強く民主化を求めていく努力がいる。
日本選手団は善戦したが、トップ選手の顔ぶれが前回とあまりかわらなかった点が気に
なる。若い力が伸び悩んでいるのは、日本のアマチュアスポーツを支えてきた企業チームの衰退が影響しているのだろう。その意味で、石川県関係九選手のうち、ウエイトリフティングの二選手は注目に値する。ウエイトリフティングの「聖地」として、高校選抜大会の継続開催地になっている金沢市をホームとする選手の活躍は、地方で五輪選手を育てるよい手本になると思うからである。
◎白山へ海外客誘致 台湾にも三名山の魅力を
石川県が、空前の登山ブームの韓国に向けて取り組む白山への山岳観光誘致策を、台湾
にも拡充していきたい。雪へのあこがれが強く、立山黒部アルペンルートの人気が高い台湾観光客にも、小松との定期便運航を機に、日本三名山の一つとして売り込む余地は十分にあろう。観光ルートとして整備された立山とは一味違った山登りの魅力をアピールしたい。
県は先ごろ韓国の旅行社や山岳専門誌の担当者を招き、白山登山や金沢視察、温泉宿泊
などを体験してもらい、白山を柱とした多様な観光資源をPRした。
登山愛好者の増加に伴って、バラエティに富んだ日本の山々に熱い視線を送る韓国の山
岳観光ビジネスに目を付けたのは結構だが、そうした傾向は、ショッピングより、豊かな自然や温泉といった体験型観光を好む台湾にも当てはまるのではないか。
とりわけ注目したいのは、立山黒部アルペンルートが台湾客に圧倒的な人気があること
である。日本の国際観光振興機構が三月にまとめた訪日外国人の満足度(推薦率)調査によると、台湾の人で「友人にぜひ勧めたい場所」として立山・黒部を挙げた人が67・6%と、北海道の観光地を上回ってトップとなっている。
もちろん、交通網が整備され、「雪の大谷」などの目玉観光スポットがある立山・黒部
は、登山愛好者の観点から見れば、少し傾向は異なるかもしれない。しかし、富士山、立山と並ぶ日本三名山の一つである白山が、立山とそう遠くないところに位置し、小松空港からのアクセスも良いということになれば、立山・黒部を体験したリピーター層を中心に、大いに訴える魅力があるのではないか。
登山に限らず、白山麓や南加賀一帯には、台湾客が好むスキー場群やゴルフ場、温泉地
、パノラマ景観を楽しめる眺望スポットなどが集まっている。地元では、白山、小松、加賀三市や経済団体が連携して海外誘客を図っているが、こうした動きと歩調を合わせ、韓国と同様、台湾にも、まるごと白山の魅力を発信したい。