文化や風土などは国によってまちまちだ。十年ほど前に中国を訪れた際、驚いたことの一つに「偽時計」がある。
大都市の商店街で「偽時計あるよ、買わない?」と現地の人が片言の日本語で堂々と声を掛けてくる。興味半分で応じると、こざっぱりした店に案内された。何種類もの高級ブランド品を模した偽時計が並び、本物の一割程度の値段で販売されていた。
大勢の欧米人や日本人が面白がって買っていた。偽物を本物と偽り、高く売ってぼろもうけしようという魂胆がないからだろう。店員も悪びれた様子はなく、逆に開けっぴろげな感じが苦笑を誘った。
中国は「模倣品大国」といわれ、さまざまなコピー商品を世界に送り出しているとされる。国際的な批判の高まりを受け、最近は中国政府も取り締まりを強化しているようだが、偽物づくりに対し寛容な風土があるのは間違いなさそうだ。
北京五輪の開会式では、「偽装」が相次いで判明した。花火による巨大な足形が合成映像だったり、少女の歌声が別人のものだったりした。「一杯食わされた」と海外で波紋が広がったが、中国では「たいしたことではない」といった声も聞かれる。
今夜は五輪の閉会式が行われる。再び「偽装」はあるのか。今後の中国の行方を占う上でも興味深い。