ここから本文エリア 現在位置:asahi.com> マイタウン> 和歌山> 記事 カレー毒物混入事件
6 開智高校理事 森康宥さん(78)2008年07月24日 ●命の重さ生徒に伝える 事件で高校1年生の女子生徒が亡くなり、同級生や、図書委員として毎日一緒に活動していた生徒のショックはとても大きかった。当時副校長として、生徒たちに何とか落ち着いて授業を続けてもらいたいという思いが一番だった。そして、事件を機に命の大切さを生徒に伝え続けていかなければいけないと考えた。 学校はまだ夏休み前で、生徒が亡くなった翌日の98年7月27日朝のホームルーム時に、校長が全校放送で訃報(ふほう)を伝えた。教室の中、そして廊下にも取材のカメラの放列。生徒は声を上げて泣き、担任も大変つらい思いをしたと思う。それ以後は、ともかく授業ができるように生徒や教員への校内での直接取材はお断りした。 その年の8月31日、亡くなった女子生徒の両親が学校に図書券を寄付してくださった。それで本を購入し、生徒の名前から「みゆき文庫」とした。毎年、新入生には校内を案内する際に、みゆき文庫と事件について説明している。 当時は、学校にカウンセラーを呼んで生徒をケアするようなことはなかった。ただ、事件で被害を受けた男子生徒は元気に卒業したので、学校としてきちんとフォローできたのではないかと思う。 今も無差別で人を刺すような、ひどい事件が絶えない。そうした事件が起きる根っこには、(犯人は)命の大切さ、奪われた者の悲しみがわからないということがある。学校でみゆき文庫を受け継いでいくことで、命を奪われる悲しみを風化させないようにしたい。
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