2008-08-22
■[時事問題][心理学小話]リストカットの告白をするのであれば、そういった告白記事を取り上げるのであれば
「リストカット」に「自傷行為」 なぜ次々芸能人が告白するのか
リストカットなど自傷行為を告白する芸能人がここのところ急増している。女優の奥菜恵さん、元「モー娘。」の加護亜依さんなどが記憶に新しいが、グラビアアイドルの有沢ゆいさん(19)も、「私は自分を(刃物で)傷付ける行為をしていた」と2008年8月21日付けのブログで告白した。間もなく発売のDVDにもその傷が映っているのだという。なぜ芸能人としてハンデになると思われるこのような告白が相次ぐのだろうか。
■「誰もそんなこと気にしないよ」
有沢さんは08年8月21日、「重要な報告です」という題でブログを書いた。環境の変化にうまく対応できず、ストレスを抱え込んで悩み、「過去に自らを傷付けてしまう行為をしていました」と告白したのだ。今も赤く目立つ傷が体のところどころに残っていて、08年8月末に発売する初のDVDにも傷が映っているのだという。有沢さんはこの報告が遅れてしまったことを詫び、「こんな私でもグラビアの仕事を続けていられるのは、ブログで応援して下さっている皆さんのお蔭です」と神妙な文章で結んでいる。ブログのコメント欄には80もの投稿があって、「勇気出して報告ありがとう。ここのみんなはゆいちゃんを応援してます」「誰もそんなこと気にしないよ(^ー^)」などと励ましのコメントが並んでいる。
アイドルが自傷行為をしていたといった告白は、イメージダウンになるというのが従来の考え方だ。しかし、今年に入りこうした告白が増えている。奥菜恵さんは08年4月発行の著書「紅い棘」で、高校時代に孤独感からリストカットをしていたと書いた。加護亜依さんは喫煙問題で所属事務所を解雇された後、自分の将来に悩み、家にあったハサミでリストカットしたと08年4月のテレビインタビューで語った。
08年7月には女性芸能人が「ai-ka」というペンネームでケータイ小説「アイドル。」を出版。真実が書かれている、という触れ込みのこの本には、主人公がリストカットをするシーンが度々出てくる。また、お笑い芸人の鳥居みゆきさんが、リストカットしていたことが08年6月にネットで話題になった。これはまだ売れる前の鳥居さんが、雑誌「裏BUBKA」の03年5月号のインタビューで話したものだった。
■「話題の提供というところですかね」
なぜ芸能人はリストカットなど自傷行為を告白するようになったのだろうか。有沢さんが所属する芸能プロダクションのエートップはJ-CASTニュースの取材に対し、今回の告白は有沢さんとプロダクションの話し合いのもと決めたと話した。有沢さんの足には小さいけれども多数の切り傷があり、化粧などで隠そうとしてもDVDのシャワーのシーンなどで化粧が流れてしまう。サイン会などでスカート姿だとファンに傷がわかってしまうため、思い切って公表することに決めたのだという。同プロダクションは、「ありのままを見せなければいけない、というか、ブログはあんな感じですが、それほど深刻にどうのこうのというわけではないんですよ。今月末にDVD発売のイベントがありますから、話題の提供というところですかね」と話した。
漫画「リストカット症候群から卒業したい人たちへ」を監修した、阪南病院の西側充宏精神科医はリストカットに至る原因をこう説明する。
――リストカットをする若者が年々増えているが、死のうとして切っているのではなく、切った痛みで生きている実感を求めたり、周りの人に心配してもらいたいという欲求から、つい切るのが癖になってしまう場合が多い。
西側医師は「リスカ」という文字が、ネットなどで軽々しく語られる現在の風潮を「時代が変わったのかな」と感じているのだという。
「親からもらった体を大事に、と昔は言いましたよね。それを『リスカ』ですからね。リストカットしてしまう原因は本当に様々で難しい。そんな中で、有名人がリストカットのカミングアウトすることは、影響力があるだけに、どうかと思います」
(8月22日、J-CASTニュース)
日本のマスコミは、自殺報道の問題点に無頓着であり、WHOの勧告「自殺を予防する自殺事例報道のあり方について」(2000年)などに従う気配もないし、業界団体で適切なガイドラインを定めるという動きもあまり見られない。結果として、さらなる自殺を増長・誘発している。そして、それらをまた報道してしまう。
※参考ホームページ
自殺対策支援センターライフリンク 「いじめ自殺」報道のあり方
自殺に対してもそうなのだから、自殺未遂とも言えるリストカットの自傷行為に関するマスコミの扱いについても問題だらけだ。こういった有名人の告白を取り上げることは、結果として多くの人の自傷行為を受容・共感、そして肯定してしまうことになり、自傷行為の抑止とは逆の方向に働く。
専門家にしても、マスコミにしても、「自傷行為はしてはいけない」という姿勢を徹底すべきだ。自傷行為にいたった経緯や気持ちはともかく、行為として結果としての自傷行為は厳しく否定されなければならないと考える。告白する有名人にしても、それを取り上げるマスコミにしても、扱うのであれば「自傷行為は間違った行為である。やってはいけない」というメッセージを強く伝えるべきだし、リストカットに代わる手段を伝えたり、専門機関の紹介やそこに行くことも強く伝えるべきである。
なお、厳しい意見だと思うが、自分の体が商品であり資本である言えるグラビアアイドルが、自ら体を傷つけ、そして傷を隠さず映像商品や画像商品として売り出してしまう行為は、グラビアアイドルとしてのプロ意識に欠けているとしか思えないし、彼女のプロダクションにしても同様に感じる。リストカットを「話題の提供といったところですかね」とコメントするのも悪い趣味としか言いようがない。
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