社説
児童ポルノ/規制強める法改正を急げ
児童ポルノの被害が深刻になっている。今年上半期に全国の警察が摘発した児童ポルノの製造、提供事件は、前年同期より17%増の三百七件で過去最悪になった。
警察庁は、インターネットを通じて流通し被害が拡大した、と指摘する。より問題なのは警察の摘発対象にならない形で、ネット上に流れている画像が多いことだ。規制強化を急がねばならない。
児童買春・ポルノ禁止法はあるが、処罰の対象は、児童ポルノの製作や販売だ。販売目的ではなく個人が所持している場合の罰則はない。このため、インターネットを通じ日本から国境を越えて画像が流出するケースが後を絶たない。
主要八カ国(G8)で児童ポルノの単純所持を禁じていないのは日本とロシアだけで、今春にはシーファー駐日米大使が日本の法規制強化を要請した。もはや看過できない事態といえる。
ネットのポルノ画像が問題なのは、一度出回ると複製が繰り返されるからだ。削除されたはずの画像が別のサイトで流されることも珍しくない。画像を一度ネットに流された子どもは、自分の画像を見た人がいるかもしれないという恐怖をいつまでも抱いて生きていかなければならない。最近は乳児に暴行を加える様子を動画で流すなど極めて悪質なサイトもあるという。
先の通常国会では、自民、公明の両党が児童買春・ポルノ禁止法の改正案を提出し、継続審議になっている。「自己の性的好奇心を満たす目的」で十八歳未満の児童の写真を所持した場合、一年以下の懲役などを科す内容だ。ネットの接続業者にも画像の拡散を防止し、捜査機関に協力する努力義務を盛り込んでいる。
しかし、単純所持の禁止について問題点も指摘されている。迷惑メールで一方的に送りつけてくるケースもあり、意図しないで閲覧してしまう可能性があるからだ。
民主党も法改正を検討しているが、所持一般を処罰することには慎重論があり、有償や複数回の取得行為に限定すべきとの方向で話し合っている。
それでも規制強化では一致している。与野党で十分に論議して接点を見いだし、臨時国会での成立を目指してほしい。
大事なのは子どもの人権を守ることだ。もちろん国際的な規制強化の要請にも応えねばならない。悪質な画像が日本国内から流される状況を改めたい。
実効性のある法改正が必要だ。
(8/24 09:03)
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