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【断 大月隆寛】どうせ見たい番組もないし…
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お気づきでしょうか。NHKの衛星放送の画面右上に、ちっちゃく「アナログ」という文字が映るように。
むかし、同じように「カラー」というロゴが映っていた時期がありました。カラー放送が始まり、それに連れてカラーテレビの普及がめざされていたころ。もう40年ばかり前のことです。白黒画面に映るその文字は当時、やはり人心をさかなでしたものです。「いまカラーでやってんねんぞー、おまえら見られへんやろー、ざまーみいー」と言われてるようでハラが立つ、と高座でぼやいていたのは、後に明石家さんまの師匠として知られるようになった笑福亭松之助師匠。思えば、さすがでしたな。
ただ、カラー放送は白黒テレビでも当然、見られました。でも、デジタル放送は今のテレビじゃ見られない。だからとっととデジタル対応テレビに買い替えろや、という温かいご配慮からの猫なで声がこの「アナログ」表示なのでしょうが、はてさて、そううまくいくものかどうか。
デジタル放送は画面がきれい、というのはまあ、そうでしょう。最大の問題は、それで見たい番組が今の地上波テレビにどれくらいあるのか、ということで。だって、お笑い芸人の毛穴や女子アナの厚塗りをわざわざ高画質大画面で、カネかけてまで見たくもないわけで。
今のこの官民あげての地デジ普及促進踊り最大のネックは、ハードでなくソフト。肝心要のテレビ番組そのものがそっぽ向かれてることに、当のテレビ局がいまだに無自覚。いたましい限りです。(札幌国際大学教授)