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2008年8月24日

◎医学部進学セミナー 「赤ひげ」の志を伝えたい

 医師不足を背景に石川県、金大などが今夏、医学部進学セミナーや医師の職業体験など を相次いで企画しているのは歓迎すべき動きとしても、工夫してほしいのは受験対策や一般的な医学の魅力にとどまらず、地域医療に献身する「赤ひげ」のような志を伝えてほしいということだ。

 医療の道を目指す若い人たちに向け、第一線の医師が地域医療への情熱や使命感を語る ことは、県の幹部が奨学金などの優遇制度を説明するよりはるかに心に響く説得力があり、地域に目を向けるきっかけになるだろう。医師による、そうした「ふるさと教育」も積極的に展開していきたい。

 医師数の絶対的な不足に加え、二〇〇四年度からの新臨床研修制度で医学部を卒業した 新人医師が大都市や有名病院に集中する傾向が強まった。医学部の定員増はようやく認められたが、短期的には地域での医師定着を促すような制度の見直しが急務である。

 新制度で浮かび上がった気掛かりな点は、若い医師が待遇のよい施設、有名病院を志向 しやすい点だ。研修医を受け入れる地元の臨床研修病院がまず働きやすい環境を整える必要があるが、それと同時に地域医療への関心を促す視点も極めて重要である。

 県が今月上旬、金沢市内で初めて開催した医学部進学セミナーでは、谷本正憲知事が医 師不足の現状などを説明し、修学資金を貸与する地域枠の受験を呼びかけ、金大関係者らも体験談を発表した。今月二十七日には金大附属病院で心臓治療の最前線に触れる小学生向けの体験学習会が開かれ、最新の内視鏡ロボットの操作体験などもある。こうした取り組みが広がることを期待したいが、そこで大事なのは地域で医療を担うことの素晴らしさや喜びも参加者に知ってもらうことであろう。

 この地域には世界レベルの技術を持つ医師や全国から患者を集める医師がいる。産科、 小児科、麻酔科などの過酷な勤務ばかり強調されがちだが、そうした中でもやりがいを抱いて献身的に働いている医師が多くいる。その志の高さに触れれば、地域のために働くという意識も一層強まるだろう。

◎国連再び存在感 イラク復興の弾みに期待

 国連が今後、三年間にわたってイラクで教育、上水道整備、マリキ政権に対する透明性 の高い行政運営に関する支援などに当たることになった。復興の弾みになってほしい。

 昨年八月の国連安全保障理事会で国連イラク支援団(UNAMI)の任期の一年延期や 、国連の役割拡大が決まったことを受けたもので、イラク国民だけでなく、米国などイラクへ軍隊を派遣している国々の「戦争疲れ」もあり、再び存在感を発揮することになったのである。五年前の二〇〇三年八月、バグダッドの国連現地本部が狙われ、デメロ特別代表ら職員二十二人が死亡し、約百五十人が負傷した爆弾テロで一度は撤退したことを考えると、よい意味での様変わりである。

 このところ、イラク情勢が著しく好転してきた。米軍やイラク治安部隊の死者数、テロ 件数が劇的に減ったほか、イラク政府が完全に支配する地域が95%にまで広がったといわれる。

 テロとの戦いの最前線だったパキスタンがムシャラフ大統領辞任後、急速に治安が悪化 していることや、武装勢力タリバンが勢いを盛り返してきたため各国に兵力の増員を求めているアフガニスタンに比べると対照的である。

 イラクのテロリストが政変に乗じてパキスタンに移動し、それがタリバンの勢力盛り返 しにつながっているとの分析もあるが、安定への兆しがみえてきたといえるようだ。ただ、再建する国家像の描き方をめぐって、連邦制か中央集権型かと議論が割れており、これも先行きを不透明にしているといわれている。

 処刑されたサダム・フセイン元大統領を裁いた法廷では無法な独裁の数々があぶり出さ れている。多様な意見に謙虚に耳を傾けず、むしろ意見を述べた者が相次いで変死し、耳に快い意見だけが採用され、国家の中枢を親族で固めた等々が明らかにされたのである。

 指導者や国民が、国連の幅広い支援活動の下でそうした数々の教訓を国家再建に積極的 に生かせるかどうかがイラクの将来を決めることになるのだ。


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