大量採用を続けるメガバンクが、「新人教育」に頭を悩ませている。各地の支店に配属し、現場で学ばせる「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」が間に合わないためだ。金融の基礎や接客術を教える専門の学校を開いたり、塾の形式で訓練をしたり、各行とも工夫を凝らしている。
三井住友銀行は、新入社員の採用が今春1800人、来春に2400人にのぼる。04年まで数百人だったのと比べれば大幅な増え方だ。支店に配属される新人の数が多すぎて、従来型のマンツーマン指導が難しくなった。
このため、リテール(個人向け金融)部門の新入社員向け「新人育成学校」を東京と大阪に5月に開いた。名付けて「SMBCリテールバンキングカレッジ」。模擬店舗を設けて接客を疑似体験するほか、為替や預金の事務の基本などをたたき込む。期間は半年間で、配属先の店とカレッジを行き来する。
2350人が来春入社するみずほグループ傘下のみずほ銀行では、入行10年目程度の中堅組が先生役になる「みずほ塾」を設けた。月1回、各支店に配属された新人が集まり、10人ほどで勉強会や食事会を開く。新人に仕事のコツを教えたり、悩みの相談にのったりするのが狙いだ。
バブル崩壊後に不良債権処理に苦しんだメガバンクは人員を大幅に絞った。それがここ2〜3年は、人手不足を解消してリテール部門などの強化に乗り出そうと、新卒者の大量採用に転じている。ただ、現場では保険など新しい商品が増えて仕事は複雑になっており、新人にも量と質の両立が求められている。学校や塾はそのための工夫だが、「仕事は支店に放り込まれ、現場で怒られながら覚えるものなのに」(大手行関係者)との声も中堅以上の世代から出ている。(畑中徹)