社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:総合経済対策 ばらまきでは乗り切れない

 政府が月内にも決定する「安心実現のための総合対策」は、どう言い訳をしようと、総花的なばらまき型経済対策になりそうだ。これまでの政府部内での調整でも、国民の安心・安全対策、低炭素社会実現対策、原油や食糧の価格高騰対策の柱立ての下、緊急対策、短期対策、中長期の構造対策が混在したままだ。

 週明けから与党との調整が本格化する。自民、公明両党は、景気テコ入れへの積極的取り組みを印象付けるため、世間受けする施策の盛り込みを求めることは確実な情勢だ。

 それでいいのか。

 日本の景気は日本銀行も約10年ぶりに基調判断を「停滞」に下方修正したように、ピークを過ぎた。4~6月期の実質成長率は前期比・年率で2・4%のマイナスに落ち込んだ。前年同期比の成長率もじわじわと低下している。4~6月期は1%で、7~9月期はさらに低下しそうだ。

 では、いま、経済政策として何をやらなければならないのか。

 第一は景気が過度に落ち込むことを食い止める施策だ。第二は原油高騰などで大きな打撃を受ける業種や中小企業への激変緩和措置だ。第三は競争力強化に向けた産業の構造改革や地方再生策だ。

 このうち、競争力強化や地方再生は総合対策の策定にかかわらず、積極的に取り組まなければならない中長期をにらむ課題だ。温暖化対策も同様だ。基本的には来月から編成作業が本格化する09年度政府予算の中にしっかりと位置付け、必要な財源を配分することだ。日本経済の構造そのものにかかわる施策であり、景気対策ではない。

 それに対して、景気テコ入れ、あるいは、原油高騰対策は、いまだからこそ必要な措置である。それだけに、ばらまきに堕してしまわないよう、中身を精査しなければならない。過去にも、効果が疑わしい、あるいは、必要性の高くない事業や施策を数多く並べることで、政府・与党の景気に対する取り組みの熱心さを強調することが度々あった。そこで、財源手当てとして安易に使われたのが赤字国債増発であった。

 今回も、1兆円を上回る補正予算となれば、国債増発が不可避だ。自民、公明両党ともに大型補正を求めている下で、政府が財政規律の維持を守ることができるのか、正念場である。

 秋の補正予算を小幅にとどめるため、09年度予算と一体でとらえる15カ月予算という考え方も議論されている。しかし、09年度は08年度以上に税収は厳しそうだ。問題先送りの色彩が濃く、先々国債の大増発を招きかねない。

 詰まるところ、景気落ち込み食い止めに効果があるという施策を厳選し、実施することに尽きる。そうしたことに知恵を絞るのが政治や政府の仕事だ。

毎日新聞 2008年8月24日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報